京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と長崎大学の研究グループは、骨粗しょう症薬の「ラロキシフェン」に、新型コロナウイルスの感染を阻害する働きがあることを見いだした。日本で一部の製薬会社がコロナ薬として開発する準備を始めているという。
研究陣は新興感染症に備え、新型コロナを含むRNAウイルスに共通して抗ウイルス作用を示す医薬品を探した。米国や日本の承認薬500個を、センダイウイルスを感染させた未分化ヒトiPS細胞でスクリーニングし、効果を見込めそうな薬剤の中から副作用懸念の小さい薬を5個見つけた。
次に、擬似的なエボラウイルスおよび新型コロナに感染させたそれぞれの細胞に薬をまいた。骨粗しょう症薬の選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)「ラロキシフェン」を投与した細胞は、細胞数は減らずにウイルス量のみが減少する効果が顕著だった。
新型コロナのスパイクたんぱく質で覆った疑似ウイルスの実験で、宿主細胞にウイルスが侵入するのをラロキシフェンが阻害していることを確かめた。CiRAの井上治久教授によると、体内にエストロゲン受容体が存在していなくても抗ウイルス効果を見込める。ただ、コロナ薬に転用するには、骨粗しょう症の承認用量よりも多い用量の投薬が必要という。
このほかに糖尿病薬「ピオグリタゾン」も新型コロナの感染抑制効果を見込めることを確認した。研究には2機関のほか、理化学研究所とIDファーマも参加した。