イソプロピルアルコール(IPA)の国内需給が3月からタイトになりつつある。JXTGエネルギーとトクヤマの定修が今年前半に行われ、玉が限られているなか、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に需要が強まっている。消毒用途にとどまらず、冷凍食品などの売れ行き好調にともない食品包装のグラビアインキ用途も活発となっているようだ。一部では供給制限も検討され、玉不足に陥る可能性も出てきた。

 今年はJXTGエネルギーが2~4月、トクヤマが5~6月、三井化学が10~12月と全社定修のため、供給余力が限られると予測されていた。年産能力は3社で約22万トンだが、内需は半分ほどに過ぎず、輸出も安定的に行われている。定修年とはいえ、輸出を減らした分を国内に振り向ければウェルバランスで推移すると目されていたが、3月から需給がひっ迫しつつある。

 JXTGエネルギーの定修やトクヤマの定修前の玉貯めによって供給余力がないなか、コロナ関連の需要が旺盛になり品薄感が出ている。手消毒や機械機器洗浄などの除菌用途は主にエタノールが使用されるようだが、エタノールが調達できなかった需要家はIPAを代用しているもよう。玉不足を懸念して備蓄目的に購入する仮需が舞い込んでいる可能性もあるという。

 また、新型コロナの影響で全国の小中学校や高等学校が臨時休校となったり、社会人にはテレワークが推奨されたりしたことで家庭内で食事する機会が増え、冷凍食品や即席麺などの保存食の荷動きが良いようだ。これによって、食品包装のグラビアインキ需要も盛り上がってきているとみられる。

 この先も定修が控えている。また、アジア市況が急騰しているため海外品の流入は現実味に欠け、当面はタイト感が続く公算が大きい。

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