JCRファーマは、英アストラゼネカ(AZ)から製造受託する新型コロナウイルスワクチンの原液の出荷を4月にも始める。使い捨ての樹脂製バッグを用いた細胞培養技術に精通することが受託の決め手になった。AZ製ワクチンは、海外治験結果を基に2月に日本で承認申請され、国内治験資料の提出も進んでいる。厚生労働省は5月頃の承認を目指しており、国内製造のコロナワクチンが近く実用化する見通し。

 JCRファーマは神戸市内の自社工場でワクチン原液を生産する。AZのワクチンはコロナウイルスの抗原遺伝子の運び役にウイルスベクターを使う。JCRは小型のフラスコから大型タンクへと段階的に増やしていったホスト細胞にウイルスを感染させてベクターを量産する。同社は50人以上の従業員を製造に振り向ける万全の体制を敷いて対応する。

 JCRがワクチン製造を手がけるのは初めて。AZは使い捨ての樹脂製バッグを培養タンク内に装てんするシングルユース設備を用い、コロナワクチンを開発した。もともと両社は親交があったうえ、JCRがシングルユース設備に精通する日本で数少ない企業であり、転用可能なバイオ医薬品工場が完成する時期とも重なり、製造の打診を昨年3月に受けた。

 ワクチン製造の経験がなかったJCRは当初依頼を断ったが、その後、日本政府からの後押しもあり、「国のためならやるしかない」(JCRファーマの芦田信会長兼社長)と受託を決めた。グローバルで実用化を目指している希少難病薬の開発計画に遅れを生じさせない算段が整ったことも決め手になった。

 日本政府とアストラゼネカは21年中に1億2000万回分の供給契約を結んでおり、このうち9000万回分の原液をJCRが製造し、残り3000万回分を輸入で対応するもよう。原液を充填するなどの最終製剤化は第一三共のグループ会社やワクチンメーカーのKMバイオロジクスが担う。

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

ライフイノベーションの最新記事もっと見る