KMバイオロジクスの永里敏秋社長は化学工業日報の取材に応じ、開発中の新型コロナウイルスワクチンの最終治験(P3)に関して「通常と同じで良いのか。国と話し合っていく必要がある」との認識を示した。日本でも接種が進むなか、抗体価など「先行品のデータを基に評価できる仕組みが欠かせない」と強調。国内ワクチンメーカーにも呼びかけ、国に訴えていきたい考えだ。

 KMバイオロジクスは新型コロナウイルス感染症に対する不活化ワクチン「KD-414」の開発を進めており、今年3月には第1/2相臨床試験(P1/2)を開始した。目標症例数は210例。1回0・5ミリリットルずつを2回、27日間隔で接種する。「1回目の接種もほぼ完了」し、近く2回目が始まる。

 治験も順調に進み、足元、アナフィラキシーなど重篤な副反応も確認されていない。「通常の不活化ワクチンと同様の傾向」で、今夏にも「安全性、有効性もみえてくる」。秋にはP1/2の結果が出る予定で、その後、最終治験届を速やかに提出する構想を描いている。

 国産ワクチンにかかる期待も大きいものの、「ここ2~3カ月の課題」と位置づけるのがP3をどうするかだ。現状、申請には大規模治験が必要となるが、承認ずみのワクチンもあるなかで、「プラセボ(偽薬)を打って良いのかとの倫理的な問題がある」。

 仮に患者数の多い海外でのP3となった場合には、「供給義務が生じる」と指摘する。さらに整備中のワクチン製造ラインも来春には対応できる状況となることから、「設備が1年以上、空いてしまう」とも訴える。

 こうした状況を踏まえ、国に要望していきたいとするのが従来とは異なる評価手法だ。「P1/2での安全性担保が前提」だが、すでに国内接種が始まっている米ファイザー製ワクチンのデータを活用。必要となる抗体価などを見極め、国産ワクチンの評価を行う仕組みを提案した。

 また、来春には生産ラインが整うことから、まず供給・接種を進め、「データを取ったうえで判断するのが合理的」とも述べ、市販後の追跡調査で安全性や有効性を再確認する「条件付き早期承認」のような対応も求めた。そのうえで、米国にある緊急使用許可(EUA)のような非常時に適した制度構築も重要だとした。

 一方、国内でも発見の相次ぐ変異株を踏まえたワクチン開発については、「プロトタイプをつくることで対応する」。新型インフルエンザワクチンでは認められており、「同じ種族である以上、許容される」との見方だ。新型コロナウイルスワクチンでも検討を進め、今後、当局と協議していきたい考えだ。
(吉水暁)

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