【バンコク=松井遥心】新型コロナウイルスの市中感染が収まらないタイでは、企業から医療現場への支援が広がっている。衛生用品や医療機器など物資の寄付が一般的であるなか、ワクチン会場を提供したのがサイアムセメントグループ(SCG)だ。首都バンコクで今月7日から始まった大規模接種の会場に、歴史ある同社第1セメント工場の跡地が使われている。ボランティアとして社員も会場運営に参加し、“国難”とも呼べる状況の打開を目指している。

 タイでは4月からの第3波により感染状況が悪化。首都を中心にクラスターが頻発し、政府は大規模接種に舵を切った。バンコクではショッピングセンターや駅、民間施設など病院以外に会場25カ所を設置。

 このうちの一つがバンスー地区のSCG本社に近い第1セメント工場跡地。1915年に工場が建てられた創業の地で、83年までキルンが回り続けていた。現在は改修しグループのオフィスなどが入る。今回はタイ商工会議所が民間企業の協力を発案。SCGが会場提供に名乗りを上げた。使用期間は7カ月間の予定。

 接種会場には経理部門の部屋などを使用。問診や接種を行う看護師約45人が配置されており、接種後の体調変化に対応する医師や救急チームも待機する。

 現在はバンコクに住む18~59歳を対象に1日500人ペースで接種を実施。接種自体は2~3分で、問診や待機時間を含めて40分程度で終了する。稼働時間を増やせば1日最大2500人の接種が可能という。

 SCG関係者もボランティアで会場運営を支援する。社員や定年退職した元社員ら1日30人前後がシステム対応や問診入力、誘導などを担っている。

 運営が順調に進む一方、待合所は空席が目立つ。政府が進める大規模接種は今週に入りワクチン不足が顕在化。各会場に割り振られる接種対象者が日ごとに増減しているようで、接種はまだ時間がかかりそうだ。

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