新型コロナウイルスに対する治療薬開発で、欧米製薬大手2社が新たな開発計画をそれぞれ発表した。スイス・ノバルティスは、骨髄線維症などの治療薬として販売している「ジャカビ」(一般名・ルキソリチニブ)を用いて、過剰免疫により重症化した新型コロナ患者に対する臨床試験を始める。米アムジェンは、同社の強みである抗体医薬の技術を生かし、回復患者由来の抗体療法の開発に乗り出す。
 ノバルティスのジャカビは、「JAK1,2」という酵素を阻害して免疫反応にかかわる炎症性サイトカインを抑える働きを持つ。骨髄線維症などの治療薬として薬事承認されている。過剰な免疫反応による炎症(サイトカイン・ストーム)を起こしている新型コロナ感染者に同剤を投与したところ、症状が改善したとの研究報告が出ている。
 そこでノバルティスは、サイトカインストームを起こしている重症患者を対象に、第3相臨床試験を始めることを決めた。試験に入れない患者に対しては、「コンパッショネート・ユース制度」を活用して同剤にアクセスできるようにする。
 同社によると、抗IL-β抗体「イラリス」(同カナキヌマブ)、抗IL-17A抗体「コセンティクス」(セクキヌマブ)などの自社品についても、新型コロナ対象の臨床研究が行われている。
 新型コロナ由来のサイトカインストームに対する治療法では、中外製薬/スイス・ロシュの抗体医薬「アクテムラ」、米リジェネロン/仏サノフィの同「ケブザラ」も欧米などで臨床試験を開始。
 アムジェンは、米アダプティブ・バイオテクノロジーズと提携し、回復患者由来の抗体を用いた治療、治療法を開発する。回復患者由来のB細胞受容体をスクリーニングして、新型コロナに対する効果が期待される中和抗体を探す。
 アダプティブが開発した免疫分野のハイスループット・プラットフォームを使えば、患者から採取した数万、数千個規模の抗体分泌細胞を迅速にスクリーニングできるという。さまざまな抗体医薬を創出してきたアムジェンのノウハウを生かし、抗体療法として実用化する考え。

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