三井化学は、ポリオレフィン100%の多分岐繊維「SWP」の新市場を開拓する。ポリオレフィンでありながら親水性があるため熱接着が可能、天然パルプやセメントなどと混ぜ合わせることでユニークな機能を発揮するなど、他に類を見ない特徴を多く持つ。すでにティーバッグ、塗料、建材などに用いられているが、同社が世界で唯一手がける素材として包材、コーティング材、フィルターなどの産業資材、美容・健康など広く市場開発する。きょう19日からオンラインで開催される「ケミカル マテリアル Japan2020」に出展している。

 SWPはフラッシュ紡糸技術で製造する、特殊な多分岐構造を有するポリオレフィン100%繊維。1972年から市原工場(千葉県市原市)で生産する「古くて新しい素材」(不織布事業部合成パルプグループの増田和彦グループリーダー)だ。

 合成パルプとも呼ばれる。親水性があるため天然パルプとの混抄性に優れ、天然パルプと混ぜ合わせ熱処理を施すと、ポリオレフィン本来の疎水性が回復する。こうした特性からティーバッグに採用されている。ティーバッグにはパルプ製の袋をホッチキスで留めるケースもあるが、天然パルプにSWPを混抄することで熱接着できるためホッチキスが不要になる。

 塗料では粘度調整剤として機能を発揮している。チクソトロピーと呼ばれる、粘度が時間経過とともに変化する現象が起こるが、SWPを混ぜることで塗料の垂れを防止でき、厚塗りが可能になる。重ね塗りする必要がなく、作業負担軽減につながる。

 これらのほか、セメントに混ぜることでセメント粒子を効率的に捕捉でき、歩留まりや補強効果が向上し寸法安定性も高まる。欧米ではセメントボードなど意匠性の高い建材を中心に採用されている。

 今後、さらなる用途開発を進める。成形を容易にできる包装材分野、多孔質素材の孔径を制御できる特性を生かしたフィルター分野、熱接着の特性を生かした電池セパレーター分野、安全性向上に役立つ衛生材などの健康・美容分野、意匠性の高い紙加工分野など広く開拓する。

《ケミカル マテリアル Japan 2020-ONLINE-》

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