米ファイザーは9日、独ビオンテックと開発している新型コロナウイルスに対するメッセンジャーRNAワクチン「BNT162b2」の第3相臨床試験(P3)で、有効率90%以上の予防効果があったとの速報結果を発表した。数万人を登録した大規模治験として、世界で初めて有効性が示唆されたコロナワクチンになる。早ければ来週にも米国で緊急使用許可(EUA)申請を行う予定。

 米国などで行っているP3の中間解析結果が明らかになった。BNT162b2、プラセボを問わず、感染例が計96例に達した時点の解析として行われた。第三者機関の独立データモニタリング委員会が全症例を評価した結果、2回目の接種から7日後の時点で、ワクチンの有効率が90%以上であることが示された。安全性に関する指摘事項はなかった。試験は継続し、感染例が計164例に達した時点で最終解析を行う。感染後の発症予防効果や、重症化の予防効果なども評価される予定。

 米国食品医薬品局(FDA)は、コロナワクチンの有効性の基準として、「有効率50%」以上を求める指針を出している。当局関係者や開発企業からは同60~70%を理想とする意見も出ていたが、それも大きく上回るデータが出た。米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は9日、有効率9割超を記録した今回のP3について「素晴らしい結果だ」と評価した。

 P3は、最大4万4000例を登録する治験で、8日時点で9割近い症例が2回目の接種を完了した。両社は今月3週目まで安全性データを収集した後、米国でEUA申請を行う予定。今月中に申請されれば、米国で申請1番手のコロナワクチンになる。米モデルナのワクチンもP3の最終段階だが、同社は12月にEUA申請する予定。

 欧州では、BNT162b2の段階的な承認審査(ローリング審査)が始まっている。各国で承認された場合、年内は全世界で最大5000万回分、来年は13億回分を供給できる見通しという。

 日本では国内P1/2が進行中。海外P3結果と併せて日本で承認申請する予定だ。来年6月末までに1億2000万回分を供給することで日本政府と合意している。

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