米ファイザー・独ビオンテックや米モデルナなどが開発した新型コロナワクチンの基盤となる研究成果を挙げたカタリン・カリコー博士(ビオンテック上級副社長)、ドリュー・ワイスマン博士(米ペンシルベニア大学教授)が15日、都内で会見した。両氏は新型コロナワクチンは「メッセンジャーRNA(mRNA)を用いたことで迅速に開発できた」と成果を改めて強調。今後「さまざまなウイルスに対するワクチン、がんなどの治療薬として幅広く実用化されるだろう」と発展に期待を寄せた。

 国際科学技術財団の「日本国際賞」を受賞し、会見した。同賞は、科学技術において独創的な成果を挙げ、科学技術の進歩に寄与し、平和と繁栄に貢献した人物に対して贈られるもので、カリコー博士とワイスマン博士はmRNAワクチン開発に関する先駆的研究の功績が評価された。mRNAを用いた新型コロナワクチンはウイルスの同定から1年以内で実用化された。

 カリコー氏はビオンテックが「mRNAがん治療薬で臨床試験を進めている」など事例を挙げ、新たなモダリティ(治療手段)としてmRNAが多様な治療薬やワクチンに広がることへ期待を示した。また、製造面では「同一工場でほぼ同じ製造工程でさまざまな医薬品を生産可能」で「ビジネスの観点からも迅速に生産品目を切り替えることができる」と優位性を説明した。

 mRNAは構造が脆弱で、壊れやすい物質。人工的なmRNAを投与すると異物として体内から排除され、炎症反応が起きるため、医薬品への応用は難しいとされてきた。カリコー氏らは、mRNAを構成する「ウリジン」という物質を「シュードウリジン」に置き換えることで、mRNAが排除されず、有効成分となるたんぱく質を体内で大量に作れることを発見した。

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

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