アルミ市場は外部要因による変動が大きく、新型コロナウイルスの影響が懸念される。そこで現況や中長期的展望について、マッコーリーキャピタル証券の五老晴信シニアアナリストに聞いた。

◇…アルミ市場をどのようにみていますか。

 「アルミ世界需要および供給の5割強を占める中国市場が重要だ。現在の中国は、コロナショックから回復傾向にあり、GDP成長率予測でも、1~3月は前年比マイナスとなったが、4月からはプラスに転じ、夏以降さらに回復するとみている。当社が予測する2020年アルミ地金の世界需要は前年比0・6%減の6430万トンで、このうち中国が同0・1%減の3470万トン。世界供給は前年比2%増の6550万トンで中国は同3・6%増の3730万トンとなる見通しだ。つまり現時点では、中国の下支えにより世界全体では数%程度のマイナスにとどまることになる。しかし、非鉄市況は環境変化による変動が大きいので注視を続けたい」

◇…国内圧延メーカーの短期的な課題とは。

 「スリム化などを通じた損益分岐点の引き下げにより販売数量減による影響を最小化にすることだ。主要メーカーはここ数年の大型投資により固定費が上昇しているので各社が示す収益改善策の実行力に注目したい」

◇…中期的なテーマは。

 「大型投資の回収力強化が求められる。事業運営では生産ライン集約や稼働率向上、技術開発では軽量化にプラスする多機能付与による素材優位性向上に取り組み、収益力を上げていくことだ」

◇…海外に軸足を置く事業戦略に影響は。

 「成長市場でビジネスを強化していく流れに変化はないが、重要なのはローカル化だ。これまで市場予測や現地技術レベルなど見通しが甘かったケースもみられた。これからは現地完結のビジネスモデル構築が必要だ。原材料の現調化から技術レベルの向上、現地顧客基盤の強化に取り組み、現地ニーズに適応する地産地消体制の確立が求められる」

◇…長期的には、どのような企業を評価しますか。

 「企業価値へのフォーカスがより重要になる。現在、大手メーカーでは経営改革に取り組むが、取締役会の監督機能強化による企業信頼度の向上は、資本コスト低減につながり、同じ収益力であっても企業価値がより高いと評価できる。メタル産業の大型投資は収益期待値とともにリスクも高まる。企業価値向上には攻めの施策とガバナンス強化を並行して行う必要があるのだが、現在各社が進める経営改革に期待する」

◇…ポストコロナの企業をどのようにみていますか。

 「将来予測が難しいなか、事業に甘えが許されない状況になったという印象だ。この状況を受け止め、事業をどのように変化させていくかを注目したい。将来を見据えた施策による構造・経営改革の進捗加速を期待している」(聞き手=阿桑健太郎)

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