住友理工は、「スマートラバー(SR)」の医療適用を加速する。大阪大学の澤芳樹教授と共同で新型コロナウイルス感染者の遠隔モニタリングシステム開発に向けた臨床試験の手続きを開始した。両者は、SRセンサーを搭載した「体動センサ」とIoT(モノのインターネット)技術を融合した心不全の遠隔予兆医術の開発を進めるが、呼吸、心拍などの生体データを高感度かつリアルタイムで検知する特徴を新型コロナウイルス感染者の重症化検知システムへと展開する。住友理工の清水和志社長は「重症患者への即時対応と医療従事者の安全を確保できるモニタリングシステムの実現に貢献したい」と語った。

 SRは、電極と配線の間に柔軟性のある誘電層を有し、伸ばしても導電性を維持できる独自開発の柔軟導電ゴム材料。圧力による電極間距離および面積の変化を応用したセンサー用途と通電により伸縮させるアクチュエーター用途の両面から用途開拓を進める。主力事業の自動車に加え、医療、介護など幅広い分野での製品適用が期待される。

 体動センサは、帯状のセンサーデバイスと計測ユニットで構成。ベッド上にセンサーデバイスを設置することで利用者の心拍や呼吸、体動などの生体データとともに離着床の同時計測を可能とする。収集したデータは計測ユニット経由でパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器での管理、閲覧が可能であり、遠隔でのモニタリングにも適している。住友理工では昨年から研究開発向けにモニター販売を行う。

 両者は、在宅心不全患者の遠隔モニタリング環境の有用性検証を進める。体動センサで検知した呼吸や心拍情報を基にクラウド上の独自解析プログラムにより呼吸安定時間(RST)を算出。RST値を医療機関でモニタリングし、心不全悪化兆候の早期発見を可能にする。

 新型コロナウイルス感染者モニタリングへの適用は、日本医療研究開発機構(AMED)からの要請によるもので、大阪大学およびAMEDのプロジェクト認可は取得ずみ。今後、臨床試験に向けた手続きを進め、早期の実施へと進める。

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