国立国際医療研究センター(NCGM)は23日、新型コロナウイルスに対する治療薬開発で、米ギリアド・サイエンシズが開発中の抗ウイルス剤「レムデシビル(一般名)」の臨床試験を始めると発表した。米国立衛生研究所(NIH)が先月開始した国際臨床試験に参加する形で始める。感染者のうち、肺炎症状がある重篤患者が対象。治験開始に向けた手続きが完了次第、3月中にも投与を始めたい考え。
 NIHと共同で行う国際共同医師主導治験「アダプティブCOVID-19治療試験(ACTT)」として、日本でレムデシビルの臨床試験を始める。対象は新型コロナの感染が認められ、肺炎症状がある患者。レムデシビルとプラセボの2グループに分けて10日間投与し、15日目の臨床状態を8段階で評価する。最終的にはグローバルで最大75施設から約440例の症例登録を計画している。
 日本で治験を主導する大曲貴夫NCGM国際感染症センター長によると、日本での治験開始に向けた監査手続きを今週中にも完了させ、「なんとか今月中には投与開始したい」としている。同センター以外の日本の参加医療機関は未定。レムデシビルはこれまで一部の医療機関で個別に使われてきた。23例分の薬剤が日本向けに供給されており、今月16日時点で同センター長により9例が投与ずみ。
 新型コロナに対する有効性が期待されている既存薬は他にもあるが、抗ウイルス作用を評価した非臨床データでレムデシビルがとくに高い抗ウイルス活性を示したため、まずはレムデシビルの臨床試験に着手する。
 レムデシビルの新型コロナに対する臨床試験は、ギリアド自身も企業主導の大規模治験を始めており、日本も参加する。
 新型コロナ感染が世界中に広がり、同剤の臨床試験以外の需要も急増している。ギリアドは22日、コンパッショネート使用を目的とする個別の新規依頼は当面見合わせ、治験に参加できない重篤患者などに薬剤を供給する「拡大アクセスプログラム」を導入することを発表した。大曲センター長によると、NCGMが行う試験の治験薬はNIHから供給され、必要量は確保できている。
 NCGMは新型コロナに対する有効性が期待されている他の既存薬についても、臨床試験を計画している。まず肺炎症状がない患者は、帝人ファーマのぜんそく治療薬「シクレソニド」を投与する臨床試験に参加させる。肺炎があり、参加条件を満たす患者は今回のレムデシビルの試験に参加。試験の対象外となる患者については、富士フイルム富山化学のインフルエンザ治療薬「ファビピラビル」と急性膵炎治療薬「ナファモスタット」を投与する試験を検討。それも対象外となる重症例には、免疫調整薬を追加するなどの救命治療を候補にしている。

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