新型コロナウイルスが世界経済に大きな影響を及ぼしている。調査会社ガートナーは4月に2020年の半導体需要予測を前年比0・9%減と当初予測から大幅に下方修正。需要家の落ち込みが大きく響くと予測している。半導体/エレクトロニクス・グループ シニアプリンシパルアナリストの山地正恒氏に聞いた。

▼新型コロナウイルスの影響をどうみますか。

 「3月末までは中国の工場停止が最も懸念されていたが、その後、世界中がロックダウンとなり事態が悪化した。半導体需要予測も当初見込みより大きなマイナスだ。中国は回復しつつあるが、4月は世界中からオーダーがなくまったく動いていない。中国内も雇用が失われ、消費者心理が低下。世界中が止まれば中国の工場も止まり、その影響で内需も落ちる」

▼現状のシナリオは。

 「春がウイルス影響のピーク、夏に改善し秋冬に制御されると見込んでいる。経済回復もそれぐらいから。雇用が維持され安心できる状況になれば、消費者心理もある程度よくなるだろう。ただ経済に大きなダメージがあり、当初考えていたようにはならない」

 「21年の見立ては落ち込みからの大幅回復。自動車を含め多くが回復するだろう。ただ、産業機器の動きは特異で、やや低迷が続くとみている。企業は不安が大きい状況で積極的な設備投資はしない。既存の設備で対応し、市場をみながら供給能力を上げていくだろう。メディカル機器などごく一部は需要が増えているが、全体的には落ち込みが激しい」

▼半導体はどうですか。

 「需要先の影響が大きい。スマートフォンは5G(第5世代通信)が市場を牽引するとみていたが1年後ろ倒し。20年は苦戦を強いられ、復調は21年以降になるだろう。メモリーはハイパースケーラーのデータセンターが上昇基調で、とくにNANDが好調。21年はDRAMも含め大きく成長するだろう」

 「自動車は1台当たりの搭載量は増えるが、販売台数が落ちる。中国は感染ピークの2月が8割減、今も欧州などが厳しい状況。生産が止まればチップ在庫も増え単価が下がる。原油価格下落は電動車に大きな影響はなく、むしろ企業の省エネ設備などに影響するとみる。LED(発光ダイオード)やパワー半導体の需要減につながるからだ」

 「短期的な需要減はあるが、長期では半導体の存在感はむしろ高まる。世界的にテレワークが普及すれば家庭のIT投資は巨額になる。データセンターも従来以上に必要だ。不動産などあらゆる業種で高度電子化が進み、半導体需要につながる」

▼今後の展望は。

 「コロナウイルスの問題が収束しないと、ブレーキを緩めアクセルに踏み換えるか分からない。いずれ問題は解決するが、今までの競争原理や市場トレンドには決して戻らない。新しい競争ルールやトレンドを見極めるまでキャッシュを確保し、拙速な設備投資は控えた方がいい。中期計画をそのまま継続するのは愚の骨頂。2~3年前の計画はすべて白紙に戻し、新たに作ることが重要だ。米中貿易摩擦の激化もあり、リスクをみて動かないといけない」(聞き手=佐藤大希)

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