中国勢に劣らず新型コロナワクチンの開発を加速している欧米でも注目の臨床試験データが相次ぎ公表された。いずれも、ウイルスの働きを弱める「中和活性」だけでなく、ウイルスを攻撃するT細胞の免疫反応も高めるデータが報告された。

 英アストラゼネカが英オックスフォード大学と開発するコロナワクチンは、第1/2相臨床試験(P1/2)の中間データが医学誌「ランセット」で論文掲載された。英国で成人1077例を対象に行った試験で、すべての被験者で免疫応答が確認された。ウイルスに対する抗体が約4倍に増え、回復患者と同等のレベルまで上昇。接種1回で約9割、2回で100%の被験者で中和活性が認められた。T細胞の免疫反応も強化され、接種14日後をピークに約2カ月持続した。安全性評価では倦怠感や発熱、接種部位の痛みなどが報告されたが、重篤な副反応はなかった。

 ランセットでは、AZと同種類のウイルスベクター型ワクチンを開発している中国のカンシノ・バイオロジクスのP2結果も同時発表された。同社の試験でもAZの試験データと同等の安全性と免疫反応が確認された。

 mRNAワクチンを開発中の独ビオンテックは、米ファイザーと共同実施している欧米での臨床試験で、ドイツで行ったP1/2の速報結果を発表。安全性、有効性ともに良好で、今月初めに発表した米国試験の速報データと同様の傾向だった。AZなどの結果と同じく、中和抗体だけでなくT細胞による免疫強化も示された。両社は今月中に3万例規模のP3を始める。中国では、開発権を導出した上海復星医薬が近くP1を開始する見込み。

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