新型肺炎の影響を受け、2020年第1四半期(1~3月)の日本や中国の経済減速が確実視されている。今後の焦点はその深度であり、どのように終息し回復に向かうかに移ってきた。金融機関やシンクタンクの識者はおおむね20年後半の景気回復を見込むものの、サプライチェーンの断絶などによる影響の長期化も懸念される。中国市場との向き合い方を再考するべきとの意見もある。
 17日に公表された19年10~12月期の日本の国内総生産(GDP)1次速報値を踏まえ、金融機関やシンクタンクが経済見通しを修正している。
 三菱総合研究所は新型肺炎の感染拡大による内外需の下振れが20年半ばにかけて成長減速要因となるとし、20年の実質GDP見通しを0・3ポイント引き下げた。野村証券は中国の主要都市の閉鎖が2月末まで継続することを前提に、新型肺炎の影響が従来予想と比べ1~3月期で1・0ポイント、通年(暦年)で0・1ポイント押し下げ要因になると予測する。1~3月期の主な影響はインバウンド訪日客・消費や対中輸出の減少だ。
 第一生命経済研究所も日本の20年度のGDP成長率見通しを同0・3ポイント引き下げた。永濱利廣首席エコノミストは重症急性呼吸器症候群(SARS)により、03年度の日本の経済成長率が0・2%以上押し下げられたのを引き合いに「今回が同程度の影響にとどまると仮定しても2四半期だけで1兆円以上のGDPが失われる」と分析する。
 中国については20年前半は新型肺炎にともなう消費・生産の減速が景気を下押しするとの見方が大勢で、1~3月期については三菱総合研究所が4%前後、みずほ総合研究所も経済活動の迅速な回復は想定し難く、4%台まで減速すると見通した。
 今後の経済回復の鍵はやはり新型肺炎の終息時期であり、野村証券は早期に終息すれば4~9月期の反動増を見込む。SMBC日興証券は「警戒は必要だが、日本経済は基本的に回復基調を辿る」(同社)とみており、三菱総合研究所も消費者心理が早期に改善に転じれば「7~9月期や10~12月期の中国の成長率は6%台半ばに回復する」(同社)と予想する。
 ニッセイ基礎研究所は、20年度は新型肺炎の終息を前提として東京五輪が開催される夏場にかけて高成長となるが、年度後半はその反動で景気の停滞色が強まる可能性が高いとみる。三尾幸吉郎経済研究部上席研究員は中国の1~3月期の成長率が5%前後に低下しそうだとしたうえで、「消費や旅行は控えられているが貯蓄も貯まっているので早期に回復すればペントアップ需要が期待できる」とする一方、「長期化すれば所得が落ちて逆スパイラルに陥る可能性もある」と指摘する。
 新型コロナウイルスの影響で寸断された中国のサプライチェーンの稼働の見通しが立たないと世界経済への影響は大きくなる。永濱氏は「長引けば、部品や製品の供給減により、製品が値上げされる可能性も否定できない」とみる。(但田洋平)

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