臨床検査試薬などを製造販売する極東製薬工業(東京都中央区)は、新型コロナウイルス抗体治療薬として有望なヒト型中和抗体を開発した。米スタートアップのアブウィズバイオ(カリフォルニア州)と共同開発した「ABW2000」が、オリジナルの新型コロナウイルスに対し高い中和活性を示した。また、いくつかの変異株についても低濃度で中和可能なことを確認した。今後、協業できる製薬会社を探し、新型コロナウイルス感染症の抗体治療薬として実用化を目指す。

 ヒト型中和抗体クローン「ABW2000」は、免疫したウサギの抗体ライブラリーをヒト化したもの。ウイルス表面のスパイクたんぱく質と、受容体ACE2の結合を阻害することで活性を中和する。極東製薬と横浜市立大学のグループはABW2000が変異株を含めた新型コロナウイルスを低濃度で中和できることを明らかにした。

 中和活性の強度指標として、ウイルス活性の半分を阻害できる抗体濃度(IC50)が用いられる。ABW2000は従来株に対し、1ミリリットル当たり23・2ナノグラムという高い中和活性を示した。英国などで流行する「N501Y」変異株では、同4ナノグラム以下という極めて低い濃度での中和を確認した。抗体カクテル療法が効きにくいとされている「E484K」変異を持つ株に対しても、IC50が同60ナノグラム未満という高い効果を発揮した。現在問題となっているインドなどで流行する「L452R」変異についても検討を行っており、良好な結果が得られているという。

 同社はABW2000をベースに、より効果が高いクローンの作製を進めている。すでにオリジナルとN501Y変異については、ABW2000から100倍以上中和活性が向上したクローンの取得に成功している。

 新型コロナウイルス感染症に対する中和抗体は広く開発が進んでいるが、変異株に対して中和活性が失われるものがあった。ABW2000とその派生クローンは、単独のクローンで幅広い変異種をカバーできることから、開発がより容易だとする。臨床応用に向け、今後、協業先となる製薬企業の確保を急ぐ。

(橋本隼太)

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