業務時間の15%を自主研究に割くことを許可-。スリーエムの全グループ社員に定着する不文律「15%カルチャー」。これを活用してスリーエム ジャパンの有志が結集し、このほど新型コロナウイルス対策のフェイスシールドを量産した。打ち合わせや試作品へのフィードバックなどはすべてオンラインで実施。全員が1度も集合することなく、発案から1カ月で厚生労働省への寄贈にこぎ着けた。

 フィルター製品・製造技術・医療製品と、普段は異なるフィールドで活躍する有志が連携。フェイスシールド1万枚を量産・寄贈した。コロナ禍にともなうサプライチェーンの混乱を想定し、社内在庫を確保ずみの部材や医療現場で実績の豊富な材料を使用。部品点数も極限まで絞り込み、防曇加工フィルム・発泡フォーム・不織布バンドの3点構成とした。頭部への固定機能を担うバンドは織り方を工夫。弾性部と非弾性部を数センチメートルごとに配置し、金具やアジャスターを用いずにサイズ調節が可能な従来にないバンドを作り上げた。

 発案者は「4度の試作を経て、最後に医療用製品としての専門的知見を反映。社会的な要請が高まるなかでアジャイルな開発を意識した」(フィルター製品技術部担当者)と振り返る。また、工程設計を担ったマニュファクチャリング・テクノロジー・エンジニアリング部の担当者によれば「製品・工程設計のやりとりは、オンラインでもスムーズに進行。場所や時間の自由度が大きく高まった」といい、業務効率化に向けた新たな発見もあったようだ。

 N95規格マスクと併用した場合の干渉回避など、医療現場での使用を想定したレビューは医療用製品事業部が担った。担当者は「寄贈品とはいえ、営業員によるアフターフォロー体制を完備。医療用製品としての責任を果たす」と強調。営業員へのレクチャーもオンラインで実施したという。

 今回の取り組みは、15%カルチャーがオンライン業務との組み合わせでも有効性を発揮した好例といえる。社員同士の有機的創発による製品開発の加速に期待がかかる。(兼子卓士)

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