◆‥新型肺炎の日本経済への影響をどうみますか。

 「足元では川下企業、具体的には消費者を対象とした業種を直撃している。倒産した企業をみてみると、コロッケ製造業者は食品、クルーズ船もサービス業に近い。老舗旅館は中国のインバウンドが売り上げの8割近くを占めていた。こうして消費者市場に影響が出ると、今後は間違いなく小売や卸、製造業など川上へと波及する。化学産業も今は影響が軽微でも、この後、衣服や自動車の販売減などの影響を間接的に受けることになろう。われわれの調べでは足元で住設メーカーなどにも影響が出始めている。精密機械産業にしてもネジなどの部品を中国に依存し、強い影響を受けている印象だ」

◆‥収束時期がなかなか見通せません。

 「企業業績に波及してくるのはこれからだ。約3800社ある上場企業のうち、新型コロナウイルス感染症の影響が出ていると情報開示した企業は2月28日時点で全体のわずか1割、363社にとどまる。2011年の東日本大震災の時は、発生からわずか20日間、3月末までに1800社弱が情報を開示した。震災の時も各種のサプライチェーンの断絶があったが、影響は比較的見えやすかった。今回の一番の違いは企業も今後どのような影響が出るか見通しが立たず、何を、いつ開示すべきか分かっていないことだ」

◆‥日本経済は景気の後退局面を迎えていると言っていいでしょうか。

 「19年は夏場に台風被害があり、10月は増税、さらには暖冬で季節商材の売れ行きが鈍かった。そこへきて今回の新型コロナだ。もともと日本の消費マインドは大きく盛り上がっていたわけではない。それを覆い隠していたのがインバウンド需要であり、このインバウンドが剥落し、活発でなかった消費マインドはさらに落ち込むだろう。もうすでに景気後退局面に入っている可能性は十分ある」

◆‥中小企業の倒産が懸念されます。

 「政府は資金繰りが悪化した中小企業向けの5000億円の緊急貸付・保証枠などの緊急対策第1弾に加え、19年度予算の予備費2700億円を使って第2弾の緊急対策を行うとしているが、ケタが一つ足りない印象だ。そもそも、中小企業は2極化しており、増益を挙げている企業は半数だ。本来は収益環境が厳しい企業に資金を回すべきだが、こうした企業は返済見通しが立たないため、なかなか借りることができない。政府が貸すといっても借りられず廃業に追い込まれる企業はこの春以降、目に見えて増えてくるだろう」
 「現在のような収束の兆しが見えない時は従来の発想では駄目だ。返済期間を10年にするとか、借入金を資本金として組み込めるような仕組みが必要ではないか。私は闇雲に中小企業を救えと言っているわけではないが、日本の99%は中小企業。ここで70%の人が働いている。70%の雇用を守らなければ地域経済や日本経済が崩壊する」(聞き手=但田洋平)

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