医療用医薬品の供給不安が広がっている。「欠品」「出荷停止」「出荷調整」の多くを占めているのは特許の切れた後発医薬品(ジェネリック医薬品)だが、新薬でもこうした問題は少なからず発生しており、日本の医薬品業界全体の信頼を失いかねない事態に陥っている。それにも関わらず、問題解決への糸口を見出せないでいる。

 この事態を重く見た、新薬や後発薬などの業界団体を束ねる日本製薬団体連合会(日薬連)は、7月に「安定確保委員会」を設置し、初の実態調査に動いた。調査対象は製薬218社、品目数は1万5444品に上る。厚生労働省の薬価基準に収載されている医薬品は約1万4000品あり、重複も含めるとほぼ全てを調べたことになる。

 結果は極めて深刻だ。今年8月末時点で全体の2割に当たる3143品が「欠品・出荷停止」「出荷調整」の状況に陥っている。その内訳は後発薬が2890品と9割以上を占めており、新薬は204品と5%弱あった。

 医療費削減策の目玉として政府は後発薬の使用促進に力を注ぎ、いまや普及率は8割近くに達する。一方で市場の急拡大は歪みを生んだ。一部の企業はシェアを伸ばすために法令違反と知りつつも増産や製品拡大に突き進み、今年は小林化工、日医工、長生堂製薬などに相次ぎ行政処分が下った。

 こうした違反企業が生産を止めた結果、他の後発薬メーカーや、元々の新薬を扱う製薬会社に注文が集中し、欠品や出荷調整といった事態に発展している。調査結果をみると、後発薬で出荷調整にある2400品の原因は、他社からの影響によるとの回答は67%に上っていた。

 売上高の大きな新薬の特許が切れると、10社を超える後発薬企業が参入するだけでなく、新薬メーカーも後発薬を手がけている。それらの医薬品に使われる原薬は中国やインドに依存し、供給元は同じというケースは多い。薄利多売の後発薬は利益を確保するために、ギリギリの生産計画を立てざるを得ない。

 独禁法上の観点から、それぞれの医薬品の供給量を参入企業同士が情報共有することも現状の法解釈の下では難しい。超法規的な措置を導入しない限り、こうした問題が続くのは間違いないだろう。

 日薬連は、実態調査を踏まえて、市場全体の供給状況をデータベースで一元管理する仕組みを検討し、行政に協力を働きかける方針だ。政府買い上げや備蓄といった案もある。後発薬促進の旗を振った行政や製薬業界全体が連携して、実効性ある解決策を一刻も早く導き出してほしい。

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