岡山県美作市が2021年12月21日、事業用発電パネル税条例(太陽光パネル税)を公布した。課税対象は出力10キロワット以上の発電事業者で、課税額は1平方メートル当たり50円。10キロワット未満や屋根への導入、急傾斜地崩壊危険区域や土砂災害警戒地域など自然災害の恐れがある地域を含まずに設置したケースは、非課税という。総務省の同意が必要なため、今後は協議を進めながら全国初の施行を目指す。

 カーボンニュートラルの実現が叫ばれる昨今、その有力手段の一つとして太陽光発電の普及に期待が寄せられている。この潮流に、今回の美作市の決定は「待った」を掛けたとも取られかねない。

 しかし美作市側も切実だ。市では導入の理由として「毎年のように国内のさまざまな場所で集中豪雨が発生し、想定していた範囲を超える河川氾濫や土石流による災害がある」と説明。「本来の土地の状態から太陽光発電設備用地への急激な形態の変化」が、その原因の一つだと懸念を示す。税収は防災対策や自然環境対策、生活環境対策に充てるとした。

 住民の命と生活を守ることは何よりも大切だ。そこに異論の余地はない。ただ、それでも今回の条例公布には疑問を持たざるを得ない。なぜならば太陽光発電協会(JPEA)が指摘するように、条例により税目を新設できる法定外目的税の導入は、二重の税負担となるからだ。これでは「新規投資や事業継続の意欲が削がれる」ため「国と地域に大きな利益をもたらそうとする太陽光発電の普及の足かせ」ともなりかねない。

 またエネルギーの地産地消の実現という観点にも注目すべきだ。FIT(再生可能エネルギー固定価格買い取り制度)期間終了後の発電所を地方自治体や地域住民が運用すれば、エネルギーインフラの自主運営が可能だ。しかも電気自動車(EV)などと組み合わせたサービスの創出にもつながる。

 太陽光発電業界ではFITを追い風に、有象無象の事業者が儲け主義でメガソーラー開発に携わった事実がある。そこでJPEAは、太陽光発電普及には「地域との共生」が不可欠とし18年6月に「太陽光発電事業の評価ガイド」を制定。21年4月に「地域共創エネルギー推進委員会」を立ち上げるなど、業界全体で環境保全と健全な事業運営の取り組みを強化してきた。この活動を全国で草の根的に続けること以外、次なる太陽光パネル税の導入を抑える道はない。資源の少ない日本で、再エネは地域に恩恵をもたらす純正のエネルギーだ。太陽光発電を決して地域分断のタネにしてはならない。

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