「DX」(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を目にするようになって数年が経つ。今ではテレビや新聞、ネットニュースなどで取り上げられない日はなく、とくにコロナ禍以降、ますます見聞きすることが増えており、企業や経営者にとって大きな関心事となっている。

 ソフトウエア開発を手掛けるドリーム・アーツはこのほど、大企業の経営層・役職者1000人を対象に、DXとデジタル化の取り組みに関するインターネット調査を実施した。「DXに取り組んでいる」との回答は59%、「業務のデジタル化に取り組んでいる」は64%で、少しずつ定着している。その一方で29%が自社のDXの取り組み状況を「わからない」と回答、DXとデジタル化の違いについて7割以上が「説明できない」と回答した。

 DXは、ITを活用して製品やサービス、ビジネスのモデルやプロセスを変革する取り組み。時には組織などの構造が大きく変わることにつながる。「業務のデジタル化」も大事だが、これは従来の仕事や仕組み、設備などをデジタルで置き換え、主に業務の効率化を目指す取り組みだ。

 会社がDXに取り組んでいる認識はあるものの、具体的な取り組みまで把握していない経営層・役職層も一定数存在する。同調査はDXがバズワードとして取り上げられた結果、本来の意味が正しく理解されないまま使われている可能性があるとしている。

 また51%が「自社の経営層が本気でDXが重要と認識している」と感じているが、職位間で認識度に差があり、役員クラスが思うほど中間管理職には本気度が伝わっていないようだ。「経営層からDXの方針が明確に出ている」と答えた中間管理職は31%にとどまり、管理職(44・4%)や役員クラス(51・4%)に比べ低い。

 同調査は、DXで成果が出ている企業の特徴は経営層のリーダーシップと指摘する。すでにDXに取り組んでいると回答した企業の52%が「成果が出ている」とし、多くが「経営層からのDX方針が明確に出ている」「経営層がデジタルの価値をよく理解している」「経営層のなかにDXの責任者がいる」と答えた。

 化学産業においてもDXの波が押し寄せている。変革し得るテーマは製造だけでなく品質検査、販売、出荷、アフターサービスまで幅広く、可能性は限りなく大きい。その取り組みがDXであることを正しく理解し、経営層のリーダーシップの下、現場とも含意識を共有しながら進めていくことで、競争力の強化や将来あるべき姿の実現につなげてほしい。

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