プラント需要が、かつてない広がりをみせている。海外ではロシアのウクライナ侵攻を契機とするエネルギー危機により、LNG(液化天然ガス)に対する投資機運が高まっている。国内ではコロナ禍で先延ばしされていた多くの案件が動き始めているのに加え、ワクチンと半導体関連の製造能力整備のための投資が本格化している。脱炭素・資源循環を目的とするプロジェクトは、2030年ごろの社会実装を目指して規模を拡大していくだろう。「プラントブーム」と言っていい状況だが、エンジニアリング各社には身の丈に合った受注を望みたい。「背伸びしたため足元がフラつく」のを何度も経験していまいか。

 LNGの供給能力を高めることは最も急がれる国際問題の一つといえ、北米、中東などの産ガス国で増強が検討されている。しかし設計・調達・建設(EPC)を実施する能力があるコントラクターは世界に4社程度しかなく、このうち2社が日本企業という構図は変わっていない。

 国内に目を転じれば、コロナ禍で凍結していた案件が再開し始めており、化学業界でも多くの機能製品の増強が検討されている。コロナ禍はワクチンを国内で生産することの重要性も再認識させた。経済産業省と厚生労働省はワクチン生産拠点整備に合わせて5000億円近い補助金で支援する方針で、製薬・化学企業などによる投資が今後具体化していくことになる。

 半導体関連でも幅広い投資が見込まれる。TSMCの熊本工場向けには、最先端プロセスに対応した装置・部材を国内で供給することが求められる。生産拡大が見込まれる電気自動車(EV)向けには、多様な無機・有機部材を供給しなくてはならない。

 脱炭素・資源循環分野は中長期的に投資が拡大していく分野だ。水素・アンモニア燃料を30年までに社会実装するためには、海外で生産し、日本に輸送・利用するサプライチェーン(SC)を具体的に検討しなくてはならない。導入の目標と時期が設定されている持続可能な航空燃料(SAF)についても、複数のSCを用意する必要がある。

 大小問わず、プラント、エンジニアリング各社は前期、高い水準の受注を達成し、受注残を積み上げている。すでに満腹状態に近いところもある。内外で拡大しているプラント需要に対し、自社の遂行能力を見極め、厳しくリスクを分析する必要がある。プラントブームは事業拡大の好機だが、大きなリスクと隣り合わせと言える。デジタル技術の活用で生産性を高める、EPCの各段階でパートナー企業との関係を緊密化するなどの対応が必須だ。

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