国土交通省が「カーボンニュートラルポート」形成の検討を進めている。港湾地区は日本のCO2排出量の約6割を占める発電所、鉄鋼、化学などが集まる産業の拠点。2050年のカーボンニュートラル実現には、このエリアで面的にCO2排出削減を進めることが重要になる。港湾地区ではCO2フリー水素・アンモニアの大きな需要が見込めると同時に、CO2を回収してCCUS(CO2回収・利用・貯蔵)拠点に輸送する機能も必要になる。これら機能が整備されるのを前提に、石油化学コンビナートの構成も検討されていくだろう。

 カーボンニュートラルポートのイメージは、こうだ。まず石炭または天然ガス火力発電所、製鉄所、化学プラントなど既存産業設備が立地。これにアンモニア、液化水素、メチルシクロヘキサン(MCH)の受け入れ基地、脱水素プラント、洋上風力や太陽光などの再生可能エネルギー発電プラントが加わる。そして水素キャリアの輸送船を海外から受け入れるとともに、CO2輸送船が出港する-。受け入れた水素・アンモニアは港湾で消費され、周辺地域へも供給されていく。

 国交省では、小名浜(福島県)、横浜・川崎、新潟、名古屋、神戸、徳山下松(山口県)の6地域の港湾を検討対象としている。これら地域ではカーボンニュートラルポート検討に先立ち、水素・アンモニア利用に関する実証試験や調査が進められている。

 横浜・川崎では、千代田化工建設がMCHの国際サプライチェーン(SC)実証を成功させている。名古屋港を擁する中部圏では、水素利用協議会が大規模利用の可能性を検討している。神戸では、川崎重工業、大林組などが液化水素の受け入れ施設、コージェネレーションを実証中だ。徳山下松では、出光興産を中心に燃料アンモニアSCの事業化調査に着手している。

 港湾地区や、その周辺に立地する化学企業は、CO2フリー水素を利用できる可能性が高まる。石油化学では、ナフサ熱分解プロセスはじめ多くの熱利用をともなうが、熱源を化石燃料から水素・アンモニア由来に変換すれば、その分のCO2排出を削減することができる。原料転換は燃料転換ほど容易ではないが、輸入水素と回収CO2から化学原料を合成することの可能性は広がる。

 国交省は、50年までに公共ターミナルでカーボンニュートラルを実現し、水素・アンモニアのSCの拠点となる港湾機能を確保する考え。石化コンビナートも歩調を合わせ「カーボンニュートラルコンビナート」構想が具体化することを期待したい。

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