日本政府が韓国に対し半導体関連素材(フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミド)3品目の輸出管理を厳格化して2年4カ月が過ぎた。この間、サプライチェーン寸断の危機感が深まった韓国では、半導体関連の素材・装置の国産化が進められてきた。

 韓国の産業通商資源部が7月に「素材・部材・装置競争力強化の2年間の成果」を公表している。フッ化水素は対日輸入額が6分の1程度に減少、フッ化ポリイミドは輸入が事実上ゼロとなり、素材・部材・装置全般でも対日依存度が15・9%と、0・9ポイント低下したとの成果を並べた。

 韓国貿易協会によると、最先端の半導体製造に使うEUV(極紫外線)レジストの、21年1~5月の輸入額全体に占める日本の比率は19年同期比6・7ポイント減の85・2%となったが、ベルギーからの輸出比率が9・4ポイント上昇(9・8%)し、実際は日本依存度が下がっていない。一方でフッ化水素の日本からの輸出比率は19年同期の43・9%から21年同期は13%と3分の1に減った。

 現状の成果はまだら模様といえるが、日本の対韓輸出管理措置が韓国の国産化策を一段と推し進める引き金となったのは間違いない。最近では半導体の製造に不可欠な超純水の国産化に向けた政府主導の協議会も立ち上がった。半導体材料を手掛ける国内化学の営業担当者は「(日韓の輸出管理問題によって)海外勢が日本の技術水準にたどり着くまでの時間が10年は縮まった」と唇をかむ。

 韓国や中国勢のキャッチアップの速さを語るうえでは、人を介する重要技術の流出をどう抑えるかも重要な論点となる。例えばフッ化水素。わずか2年で対日輸入額が大幅に下がった理由に、韓国企業による生産能力の拡大や、中国などからの輸入増がある。その背景をたどると、日本企業を辞めた技術者らの存在が浮かび上がる。

 日本の技術者の教えによって急速に力を付けた海外勢により、ここ数年で複数のプラントが立ち上がった。一般に半導体メーカーの多くは高度な製造プロセスで使われる材料の切り替えに慎重だ。ただ日韓の輸出管理問題によって切り替えの検討を余儀なくされたなかで、海外勢のフッ化水素の採用が一気に進んだという側面もある。

 経済産業省は6月にまとめた「半導体・デジタル産業戦略」のなかで、半導体製造装置・材料分野を半導体再興のチョークポイント(急所)技術として、強みを磨く必要性を示した。ならば、その急所技術が時々刻々と海外に流出している不都合な現実にも目を背けてはならない。

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