日本各地で工業・産業分野の「リアル展示会」が相次ぎ始動し始めた。新型コロナウイルスで世界的に停滞していた展示会ビジネス。アジアや中国など海外からの来場視察や交流は、まだ困難な状況だが、コロナで失われたリアルコミュニケーションや有形無形の経済的交流を取り戻すべく、主催側や出展企業・団体なども「同じ想い」で手探りを始めた。政府が決断した9月末の19都道府県対象の緊急事態宣言解除も重なり、本格的な経済復調へ地域・各地の挑戦が続いている。

 東京、横浜、名古屋、大阪と大規模な展示会場を持つ地域は、長引いた新型コロナ影響を背景にリアル展示会の開催中止や延期を余儀なくされてきた。人の移動や出展に関わる多様な経済的効果は、1回当たり数万人規模の来場展示会で「数億円以上」は確実とされる。新型コロナ前の海外来場者やホテル宿泊などの副次経済をカウントすれば、大型展示会では「数十億円」とも言われる。

 こうした直接間接の経済効果が日本全国で長い間、喪失されてきたが、一定に進んだワクチン接種と(予断を許さないが)新規感染者数の漸減傾向が後押しする。各企業において「リアル対面によるビジネスの重要性」が再認識されたことも大きいだろう。名古屋では、自動車産業に密接に連動する樹脂や樹脂加工の展示会「名古屋プラスチック工業展」(会場・ポートメッセなごや)が前回の2018年を上回るブース出展数で9月29日から、きょう10月1日まで行われている。三菱ケミカル、住友化学など化学系大手やフクビ化学工業などの地場企業も多数出展した。

 東京では「第1回国際2次電池展」「脱炭素EXPO」が同じく、きょう1日まで東京ビッグサイトで開かれている。脱炭素EXPOは、カーボンニュートラル対応という時節テーマを捉えたことも奏功。日本全国から著名企業が出展し、名古屋に本社を置く日本特殊陶業は「今春からの全社的なカーボンニュートラルと環境経営の取り組みを紹介したい」と、趣向を凝らしたブースを構えた。

 大阪でも11月17日から19日まで、インテックス大阪で次世代電力やIT関連の展示会「関西スマートグリッドEXPO」が開催予定。環境や脱炭素化に密接に関わるエネルギー・社会インフラの最新動向が披露される。名古屋プラスチック工業展では「人が往来するリアル展示会の良さを再実感」(出展した樹脂成形機大手)との声も改めて聞かれた。徹底したコロナ対策と密を避けた新常態のリアル展示会として取り組みに期待したい。

 

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