コロナ禍は、単なる感染症の問題にとどまらず、生活者であるわれわれの意識にも大きな変化をもたらした。今まで以上に社会や経済に関連した情報を見聞きする機会が増え、自らさまざまなことを考えるようになっている。人々の環境意識の高まりも顕著。気候変動や社会、経済との関連性や、環境汚染に関する議論も活発で、環境問題に取り組む企業も増えている。

 KDDI総合研究所が6月に行った調査によると、環境を意識した購買(服・ヘアケア商品・清涼飲料水・食料品が対象)について「高いと感じても環境に配慮した商品を購入することがある」と答えた環境意識が高い人は5・3%だった。これに対し「環境に配慮したか否かで商品を購入しない」という環境意識が低い人が37・5%と最も多かった。環境意識が「高い人」「やや高い人」の割合は、性別・年代別では60代女性が60%以上で最も多く、また男性よりも女性の方が環境意識が高い傾向にある。世帯年収別では1000万円以上の人が過半数を占め、年収が下がるにつれ低下する傾向にある。購入時に環境配慮商品かどうかを重視する人は全体の10%未満で、環境意識の高い人の中でも10~30%台だった。

 同調査では環境意識が高い人の購買活動の特徴を分析。購入時に、服ではデザイン、色、素材を重視するほか、ヘアケア製品では髪質に合う、機能性、洗浄力、清涼飲料水はコーヒー豆などの原料、製造会社、食料品は品質、栄養成分などを重視するという。

 今後の環境への取り組みに関しては、環境意識の高い人の56・8%が「今後環境への取り組みを増やしたい」とし低い人では3・7%にとどまった。「やや増やしたい」も合わせると環境意識のやや高い人で78・4%、低い人でも57・1%と過半数を占めた。また環境意識が高い人の40・2%が「リサイクル素材など環境配慮商品の購入を増やしたい」と回答、やや高い人では39・8%を占めた。

 同調査の考察では「環境意識が高い人は品質や機能を重視する人が多く、販売拡大には環境への配慮に加え、商品力の強化・訴求が重要だ」としている。

 まだ環境配慮より現実の生活の方が大事という人は多いかもしれないが今後、環境意識の高い人は確実に増えていくはずだ。環境に配慮し、かつ高品質、高機能な製品の実現は化学をはじめ素材産業の重要な使命。また安価に提供できれば購買層も広がる。コロナ禍を契機としたこの大きな流れを確実に捉え、自らの技術力、開発力を磨き、積極的にビジネスチャンスを掴んでほしい。

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