自動車産業を筆頭に、工業生産出荷額で国内トップを40年以上堅持している中部エリア。中部地域の法人や経済活動を強固に後押しする名古屋商工会議所の次期会頭に大同特殊鋼の島尾正代表取締役会長が内定した。11月の臨時議員総会で正式就任する予定だが、山本亜土現会頭(名古屋鉄道相談役)は「地域振興、とくに中堅や中小企業の立場で地域振興を進めるのが商工会会頭の役割。島尾氏は意欲と能力、実行力で、まさにその人」と太鼓判を押す。8月下旬に名古屋商工会議所で行われた会頭交代の就任前人事会見でも商工会議所事務方や周辺から島尾氏に期待する声が多く聞かれた。

 2021年3月、設立140周年の大きな節目を迎えた名古屋商工会議所。明治に入り商法会議所(商工会議所の前身)が東京や大阪に続々と誕生するなか、1881年(明治14年)3月、今日の名古屋商工会議所となる「名古屋商法会議所」(初代会頭・伊藤次郎左衛門いとう呉服店・後の松坂屋当主)が設立された。それから140年が過ぎ、同商工会議所を擁する中部地域は、国内において最大規模の工業生産出荷額を誇る愛知県を中心に絶え間ない経済振興活動に尽力。中部の全体経済や中部産業界の支援、行政側との調整役、地域産業振興でも重要な役割を果たしてきた。

 今年10月いっぱいで任期満了となる山本現会頭も「私は母体が鉄道を主とする運輸サービス業だったが、国内外の情勢も鑑みて次(次期会頭)は製造業からと考えていた」とし、「(大同特殊鋼は)海外にも多くの製造や販売拠点を持つグローバルカンパニーであり、100年以上の歴史を有する老舗企業という側面も含め、名古屋や中部経済の顔にふさわしい」と、会頭打診時の経緯を端的に示す。

 大同特殊鋼も主力の特殊鋼材拡大と同時に、高機能や機能性材料で次代への市場と事業開拓を加速中だ。2030年度にはCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)、半導体、グリーンエネルギーの新分野や次世代電動車(xEV)関連で、一段とその存在感を高めようとしている。そうした同社の新たな挑戦と合わせ、11月の正式就任以降、島尾新会頭の手腕に注目が集まっている。
(沼澤憲一)

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