年間純利益5000億円へ-。信越化学工業が今期、未踏の大台に達する見通しだ。日本の化学企業では初であり、世界的にも希有な優良企業として一段と存在感を放つであろう。高収益をあげている世界の化学企業は他にもあるが、資源を有するなど比較条件が微妙に異なる。同社が塩化ビニル樹脂や半導体シリコンなど純粋なモノ作りでこれほどの業績をあげているのは驚異的である▼牽引役は生活環境基盤材料事業で、とりわけ塩ビの米子会社シンテックの寄与が大きい。米国では住宅不足を背景に需要が堅調な一方、ハリケーンなどで競合他社が供給制限を強いられるなど需給バランスがタイト化。昨年は9回の値上げを実施するなど製品価格も上昇した▼シンテックは金川千尋会長が手塩にかけて育て上げた。金川氏は今年3月で96歳の年男だが、今なお市況を読み市場分析に余念がない。操業を開始した48年前、米国内13番手と最下位から出発し、世界最大手まで登りつめた▼シンテックの工場を訪れたことがある。当時、「ここにエチレン設備を立てるんです」と現場の方に説明してもらった。一方、金川氏は工場を訪れたことがないという。現場は現場に任せ、自身は出張しても顧客回りに専念するということらしい。金川流経営の一端を垣間見た気がした。(22・1・31)続きは本紙で

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