フジクラは9日、4月1日に社長交代を行うと発表した。岡田直樹代表取締役COO(最高執行責任者)が社長兼CEO(代表経営責任者)に就任。伊藤雅彦代表取締役社長兼CEOは取締役会長に就く。合わせてエネルギー事業およびフレキシブルプリント配線板(FPC)のグループを集約・分社化する事業再編を行う。2022年3月期の通期予想を売上高6505億円、営業利益320億円に上方修正し、来期以降は事業再生から持続的成長フェーズへの転換、継続的成長を目指す。

 伊藤社長は会見で「岡田COOには人を集める魅力があり、多様性の尊重と強いリーダーシップを両立する。また現在の生命線ともいえる革新的な製品、超高密度通信ケーブルの開発を担い、その際に社内だけではなく顧客と対話しながら製品を結実させるなど、これからのあるべき姿を体現している」と話した。

 岡田COOは「光ケーブルの事業再生で行ったように、苦しいなかでも皆で希望をみながら進めていく。当社は情報通信で一気通貫の事業領域を持ち幅広いソリューション提案ができる。エレクトロニクス分野でも強みがある電子部品やコネクターを持つ。成長の余地は大きくあり、着実に成し遂げていきたい」と話した。

 事業再編ではエレクトロニクス事業のFPC関連を5月1日をめどに分社化。フジクラ本社と子会社の藤倉商事・東北フジクラの事業を集約し分割承継する。コスト圧力や中華勢の追い上げに対し、製品の集約や高機能領域への開発集中で応える。

 エネルギー事業は10月1日をめどに架空送電線や産業用電線など電線・メタルケーブルを分社化。投資の抑制や事業規模の適正化、コスト体質改善を通じ、「現状で売却計画はないが、自律自営の再生をしていく」(伊藤社長)とした。

 情報通信事業では米欧を軸に海外向けを推進。スパイダーウェブリボン(SWR)、ラッピングチューブケーブル(WTC)などの戦略製品で、3~4割のシェアを持つハイパースケールデータセンター(HSDC)を捉える。米欧豪の子会社・生産拠点も有効活用し、アジアなどでの規模拡大も進めていく。

 自動車事業ではワイヤーハーネスの拠点統廃合を進め、欧州・北南米の収益改善を図る。エレクトロニクス事業と連携し、EV(電気自動車)向けのFPCやコネクターや自律運転向けのセンサー、光空間測距(ライダー)なども有望視する。新事業では中長期的な伸長領域として無線通信・ミリ波、医療、超電導の3点を設定。社内のデジタル化・グリーン化(DX・GX)も進め、競争力強化につなげていく。

 〔岡田 直樹氏=おかだ・なおき〕千葉大学工学部卒、1986年4月入社。08年4月光ケーブル開発部長、13年4月ケーブル・機器開発センター長、18年4月光ケーブルシステム事業部長、20年4月常務執行役員、21年4月執行役員COO、同年6月現職。埼玉県出身、58歳。

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