中国地方における経済の要であり、多様なモノづくり産業が集積する岡山県と広島県。両県は2018年7月の西日本豪雨により甚大な被害を受け、現在も復旧・復興に向けた取り組みが進む。一方、新型コロナウイルス感染症拡大が地域経済に大きな影響を及ぼしており、豪雨災害からの回復半ばのなか先行きの不透明感が拭えない。両県とも引き続き復旧・復興に最優先で取り組む一方、県内産業の競争力強化という大きな課題に直面している。
 岡山県は温暖で降水日数が少なく、自然災害の影響を受けにくい。「晴れの国おかやま」の愛称で親しまれているが、一昨年の豪雨災害では多くの命が奪われた。県民生活や経済活動など、さまざまな分野で多大な損害を余儀なくされ、被災者の生活再建や河川・道路・公共施設の復旧など一日も早い復旧・復興が望まれている。近年、日本各地で水害・土砂災害が頻発・激甚化し、水害・土砂災害対策に関心が高まるなか、同県は豪雨災害の教訓を踏まえた防災力強化に全力で取り組んでいる。
 広島県は、豪雨で被害が生じた企業の事業再生支援を行う一方、新しい事業が次々と生まれる事業環境「イノベーション・エコシステム」形成による持続的成長の実現を目指していく。新たなビジネスや地域づくりにチャレンジしようという企業や人材を集め、積極的に支援することで、新たなイノベーション創出につなげようというもの。さらに新型コロナで落ち込んだ経済の早期回復とともに、活力ある地域社会を実現するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどの最新技術を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進。「仕事・暮らしのデジタル化」「地域社会におけるデジタル化」「行政のデジタル化」の3つの柱で各施策を実行している。これまでも、さまざまな分野でAIを活用しつつ、行政サービスなどの向上に努めてきたが、今後もデータとデジタル技術の活用をさらに推し進め、医療、介護、福祉、教育、防災・減災、インフラ、エネルギー、まちづくりなど、人口減少社会において山積する課題に対応する構えだ。
 両県とも急ピッチで復旧・復興が進んでいるものの、いまだ本格的な回復にはいたっていない。豪雨災害からの創造的復興や、新型コロナの影響を受けた事業者への支援だけでなく、少子高齢化・人口減少や停滞する地域経済に対応した新たなアプローチが必要となる。長期的かつ総合的な視点から、活力に満ちた持続可能な地域社会を実現していってもらいたい。

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