国内の電子商取引市場が拡大している。経済産業省の2021年の調査報告書では、BtoC-EC(消費者向け電子商取引)が前年比7・35%増の20・7兆円、BtoB-EC(企業間電子商取引)が同11・3%増の372・7兆円となり、新型コロナウイルス感染拡大の影響が強まる前の19年の市場規模を上回った。すべての商取引金額に対する割合(EC化率)もBtoC-ECで同0・7ポイント増の8・78%、BtoB-ECでは同2・1ポイント増の35・6%まで高まっており、進展する商取引の電子化への対応が求められている。

 経産省が12日公表した「電子商取引に関する市場調査報告書」は、BtoB-ECについて▽建設・不動産▽製造(6業種)▽情報通信▽運輸▽卸売▽小売(6業種)▽金融▽広告・物品賃貸▽旅行・宿泊・飲食▽娯楽業-の20業種について推計した。EC市場規模は、対象とする全業種で企業のEC金額を販売金額などから捕捉、その総額から算出した。製造業では▽食品▽繊維・日用品・化学▽鉄・非鉄金属▽産業関連機器・精密機器▽電気・情報関連機器▽輸送用機械-について調査を行っている。

 国内におけるBtoB-EC市場規模は、コロナ禍の影響によって20年にマイナス成長となったものの、ほぼ右肩上がりで推移している。EC化率は、18年に30%を超えて以降も(市場規模が縮小した20年を含めて)上昇傾向を持続しており、業種によっては商取引の過半を占めるまでになっている。

 製造業の21年の状況をみると、繊維・日用品・化学はEC市場規模が37兆6509億円と前年比16・7%拡大し、EC化率も前年の45・7%から47・9%へ上昇した。鉄・非鉄金属もEC市場規模は同24・5%増の25兆2529億円へ伸長。EC化率も同2・2ポイント増の42・7%まで高まっている。製造業においてEC化率が最も高いのが輸送用機械の74・3%。次いで食品の67・2%、電気・情報関連機器の64・2%と続く。EC化率が40・7%と最も低い産業関連機器・精密機器でも、EC市場規模は同13・6%増の18兆1284億円と2ケタ成長をみせている。

 同報告書では、BtoC-ECでは越境市場が着実に拡大している状況も報告されている。企業においては、こうした拡大する商取引の電子化を、事業の成長に取り込むことが必須となっている。サイバーテロ対策を含む事業インフラの強化・拡充といった、変化に対応した守りの取り組みとともに、電子化のメリットを生かした販売戦略など攻めの経営が求められる。

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