男性社員の育児休職取得率向上を目指す動きが広がっている。今年4月に改正育児・介護休業法が順次施行されることに合わせ、男性社員への育休制度の周知徹底、取得しやすい環境の整備が進む。育休を取得した男性社員がキャリアを積むようになれば、それがロールモデルになるだけでなく、産休・育休が一つのハードルになっている女性社員のキャリア形成にも好影響を与えるはずだ。

 4月から育休を取得しやすい雇用環境の整備が義務づけられ、企業は育休に関する研修の実施、相談窓口の設置が必要になる。10月には男性の育休取得を促す「出生時育休制度」(産後パパ育休)が新設される。出生後8週間以内に4週間まで育休を取得できる制度で、従来の育休制度と別に取得できるものだ。加えて産後パパ育休と従来の育休は、それぞれ分割で取得できるため、男性は子どもが1歳になるまで計4回の育休取得が可能になる。

 厚生労働省によると、2020年度に育休を取得した男性は12・7%で、初めて1割を超え過去最高となった。一方、女性の育休取得率は81・6%。また同省の調査では、女性の取得期間がほぼ半年以上であるのに対し、男性の多くは1~2週間程度にとどまるという。このような結果をみると、男性の取得率が向上しても長期取得のハードルは高く、分割での取得は、なおさら難しいように思える。

 いつまでも社会の固定観念が壁として立ちはだかる。大部分の日本人男性は、そもそも育休を取得するという感覚を持っていない。取得できると思っていない、だから選択肢にすら入っていないともいえる。周囲も「子どもが生まれる」という男性社員に「育休はいつから取るの?」と声をかける人は少ないだろう。昨今、子育てや家事を分担するのは当たり前になったが、育休は今もなお女性の権利という考えが強い。

 近年、企業が副業の解禁に乗り出すのは、社員に本業では得られないスキルや経験を身につけてほしいからだ。であれば難問続きでも逃げることが許されない子育ては格好の自己成長の場のはず。ごく一部だが、子育てはマネジメント力の鍛錬につながるとして、育休復帰後に重要なポストを任せる企業もある。

 重要なのは育休取得の有無に関わらず、公平に能力が評価される仕組みだ。民間調査によると、21年の女性管理職の割合は平均8・9%。男性の育休取得者が会社を前進させ、育休はキャリアを諦めることではなくキャリアアップという認識が広がれば、男性の育休取得とともに女性管理職も増えるのではないか。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

社説の最新記事もっと見る