ここにきて3次元仮想空間である「メタバース」への関心が急速に高まっている。VR(仮想現実)ゴーグルなどを装着して、コンピューター内やネットワーク上の現実とは異なる架空の世界で、アバターとして活動することがビジネスにも応用され始めた。メタバースの構成要素であるXR(拡張現実)やブロックチェーン、デジタルツイン、エッジコンピューティングなどの技術や、それを支える5G(第5世代通信)をはじめ通信インフラの整備が進み、仮想空間における体験が、よりリッチでリアルなものになってきた。

 アクセンチュアがこのほど発表した「テクノロジービジョン」では、デジタル化が進んだ社会や生活、ビジネスモデルのいたるところにメタバースが遍在化することで、ビジネスや組織運営のあり方、顧客とのつながり方が再創造されつつあるとしている。世界35カ国・4650人の企業経営層・IT担当幹部を対象に行った同調査によると、71%が「メタバースは自社にポジティブなインパクトをもたらす」とし、42%が「メタバースは画期的もしくは革新的なものになる」と回答した。

 コロナ禍以降、テレワークが普及し、旅をしながら働くワーケーションも注目されている。そのなかVRイベントなどを手掛けるベンチャー企業のHIKKY(東京都渋谷区)では、社員が自分の都合や事情に応じて働く時間を自由に決め、リアルなオフィスではなくバーチャル空間のオフィスに出社、より時間と場所の制約のない新たな働き方を実践している。社員同士はアバターとハンドルネームで認識し、その空間で一緒に生活しているかのように働いているという。アバターならリアルの自分に自信がない人も変な先入観を持たず、初対面でもリアルより近い距離感で人間関係を作れるのがメリット。逆にリアルに知っている相手は、身ぶりや手ぶりからでも判別が可能なようだ。

 今後、社内業務がメタバースにシフトし、社員はどこからでも自由に仕事し、交流するようになるだろう。仮想世界での新たなコミュニケーションや経験を通じて、今までにないアイデアやビジネスが生まれることも期待される。一日中、仮想空間で働くのは現実的ではないが、リアルとバーチャルの間を行き来できるスキルは身につけておきたいものだ。

 メタバースの中には想像し得る多くの世界が作られ、すでにVRチャットとして自由に観光したり、ライブやゲームに参加したり、遠距離の人との交流を楽しむ人がいる。まず、ここからメタバースに没入してみては-。

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