世界的な国際海上コンテナ輸送力と空コンテナの不足が続いている。国土交通省では、日本発着の国際海上コンテナ輸送の需給の逼迫状況の改善に向け、2月5日付で荷主・船社・物流事業者などの関係団体に対し、コンテナの効率的な利用や輸送スペースの確保について協力要請文書を発出したが、引き続き状況の改善に向けた施策を実施して欲しい。

 野村総合研究所によると、海上輸送では2020年11月以降に発生した港湾混雑、コンテナ船の沖待ち、輸送遅延の状態が続いている。春節後もコンテナ船の沖待ち、ターミナル混雑の状況に改善はみられない。

 コンテナの主要生産国である中国は、米中貿易摩擦問題にともなう荷動き低迷の懸念から19年は前年比40%減の急激な減産を実施し、新型コロナ感染拡大の前から新造コンテナの生産量は低下していた。20年1~3月期は新型コロナの影響で世界的に貿易が停滞したが、4~6月期になると中国の生産がV字回復し、米国では巣ごもり消費で家具・玩具・家電などの輸入が増加した。これによりアジア発北米向けの海上輸送の貨物が急増した。さらに米国西海港湾において現場作業者が不足し、コンテナ処理能力が低下した。欧米では空コンテナが滞留し、アジアに空コンテナが回送されない状況に陥った。その結果、コンテナ不足によりブッキングが困難な状況が続いている。またスポットでのコンテナ手配も困難であるため、スポット運賃が高騰した。さらに海上運賃の高騰は航空運賃の高騰も招いた。取材先の商社などからも運賃高騰の悲鳴が聞こえてくる。

 こうした状況に対して荷主や船社も対策を講じてきている。荷主としてはコンテナの共用や鉄道・航空・陸送を活用、コンテナ1本貸し切りから混載コンテナへ変更しての輸送などを実施している。外航コンテナ船社は、臨時船による空コンテナ回送やコンテナの絶対数を増やすといった対策を実施している。また中国当局は、コンテナ不足が自国の輸出に影響を与えるとし、メーカーに製造能力拡大を指示しているという。

 国土交通省では、北米西岸港とアジア主要港について現在の混雑状況や要因、港湾管理者、政府や民間団体などの対応を把握するための調査を実施中。結果がまとまり次第、関係者と情報を共有するとしている。

 物流を「血流」に例えるならばコンテナは「ヘモグロビン」のような存在と言えるだろう。世界中に張り巡らされた血管のなかを、うまく循環させる手立てを官民が協力して講じなければならない。

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