循環型社会に向けて、化学企業が新たな提携に乗り出している。製造・使用・回収・リサイクルを高度に繰り返す循環型の石油化学を実現するには、各種リサイクル技術の導入に加え、廃棄物の分別・回収などのインフラや、リサイクルに要するコスト負担の枠組みが必要となってくる。変革を早期に実現するには、産官学のあらゆる関係者が技術や知恵を持ち寄り、これらの新たな仕組みを生み出さねばならない。その第一歩を踏み出したといえよう。
 プラスチックを製造する石油化学を循環型に転換するには、ごみを回収・分別し、再びプラスチックに再生する「マテリアルリサイクル」、プラスチックごみを分解油やアルコール類などの原料に再生する「ケミカルリサイクル」、植物など再生可能な資源を利用する「バイオプロセス」などが考えられる。プラスチックごみの早期削減や、今世紀後半までの温暖効果ガス排出の実質ゼロ化といった、社会が求めるスピードで循環型の仕組みを構築するには、こうした多段階の取り組みを同時に導入する必要がある。このため、それぞれの技術を有する企業が提携し、課題を素早く解決していかなくてはならない。
 こうしたなかでケミカルリサイクル実現を目指した企業提携が進み始めている。昨年11月、三菱ケミカルとJXTGエネルギーが、鹿島地区の石油精製および石油化学の提携強化に向け有限責任事業組合(LLP)を設立し、ケミカルリサイクルの技術検討にも取り組むとアナウンスした。これに続き積水化学工業と住友化学は先月、ごみを原料にしてポリオレフィンを製造するケミカルリサイクルの社会実装に向け、協力関係を構築すると発表。住友化学はさらに今月、触媒によるケミカルリサイクル技術について、室蘭工業大学と共同研究を行うことを明らかにした。
 マテリアルリサイクルでは旭化成がライオン、福岡大学、神戸大学などと組んで、プラスチック容器をリサイクルし、新品(バージン)のプラスチックと同等の性能を目指すプロジェクトを進めている。バイオプラスチックでは三井化学がバイオエネルギー企業と提携。バイオマスを原料に、従来の製法に比べ大幅にコストを削減できるバイオポリプロピレン製造プロセスの導入を計画している。
 こうした動きが一つの機運となって、まずは化学および関連企業などが提携する段階に入ったといえる。地方自治体や国なども巻き込んだ本格的なインフラづくり、仕組みづくりに発展し、循環型社会の実現に大きく近づくよう望みたい。

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