予測不能な事態に対する企業の危機管理体制強化が叫ばれて久しい。来月で発生から10年を迎える東日本大震災。サプライチェーンが寸断されるなど化学産業にも大きな影響が及び、安定供給を図るため各社は火急の対応を迫られた。そして昨年来続くコロナ禍。同様にサプライチェーンの混乱を招き、経済活動は停滞した。原因は異なるものの10年前の教訓は生かされているはずである。厳しい状況ではあるが、今は築いてきた危機管理体制を、さらに強化する好機と捉えるべきだろう。
 東日本大震災は、品質・性能に秀でる日本の素材・部品の供給をストップさせ、世界の自動車・情報機器などの生産に影響が及んだ。福島第一原子力発電所の事故を契機とした電力問題も追い打ちをかけた。これらは社会・産業を支える化学素材の重要性が再認識される結果にもつながった。一方で国内や東アジアなどのユーザーは、調達が難しくなった日本の高機能製品に頼らず、他の海外ソースに切り替えるケースも相次いだ。年月は経っても、被災状況と合わせて当時の状況は強烈な出来事として記憶に残っている。
 この苦境に対して各社は、原料、サプライチェーン、電力の安定供給などリスクの見直しに迫られた。グローバル展開が進む企業ほどサプライチェーンの崩壊がもたらす影響は大きく、原料ソース多様化も含めて再構築の機運が高まった。事業継続計画(BCP)に本格的に取り組む企業が相次ぎ、災害を想定したシミュレーションを徹底するとともに、原料・部品の2社購買といった対策に踏み切る企業は確実に増加した。
 東日本大震災を教訓に、危機管理体制は幅広い分野で強化されたことは明らかだ。BCPの観点からいうと通勤時の大雪、地震、豪雨、津波、社員のインフルエンザ罹患なども含め、あらゆるケースが想定される。テレワークは、これらに対応する一つの有効な手段であり、早くから取り組んでいた企業は今回の新型コロナウイルス対策にも生かされた。
 コロナ対策の一つとして本社機能や営業部門などでテレワークが普及したが、工場などモノづくり現場では簡単にはいかない。自動化、多能工化などを進める先に、AI(人工知能)やロボットを駆使した第4次産業革命をにらんだ取り組みも必要になってこよう。テレワークを活用した働き方改革を推し進めるとともに、サプライチェーンの見直しを進める企業は多い。今のうちにウィズコロナ・アフターコロナ時代に対応できる危機管理体制を早急に築くことが肝要だ。

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