低迷していた設備投資に回復の兆しが見え始めた。2020年は米中貿易摩擦に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大が響き、設備投資が世界的に大きく冷え込んだ。しかし年末から景気動向に敏感なプラスチック加工機械の生産が急速に上向いた。中国市場の回復が中心だが今後、他国にも波及すれば産業機械メーカーの業績を押し上げることが期待されそうだ。

 日本プラスチック機械工業会がまとめた射出成形機を中心とするプラ機械の20年生産は、合計1万1423台(前年比22・9%減)と大幅ダウン。過去10年間で最低の数字だった。また金額ベースでは合計1786億円と、2000億円を割った。

 射出成形機は、産業機械のなかで受注から生産まで約3カ月の短納期型の装置であり、景気動向に敏感に反応すると言われている。国別でみると中国市場が牽引役となった。中国は新型コロナの政府主導で抑え込み、新エネルギー車の購入補助金などで自動車需要が回復し、日本製成形機の販売が伸びた。
 日本市場は、20年時点で延期されていた自動車大手の設備投資が、ようやく再開されつつあるようだ。また政府が35年までに新車販売で電動車100%実現を目指すと表明したことで、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)など環境対応車の需要が拡大する。同時に電動化や自動運転、先進運転システム、安全装置関連の各種電装プラ部品向け設備投資が増える見通しにある。

 韓国や台湾は、新型コロナをいち早く抑え込んだことで設備投資が増加傾向にある。とくにパソコン、スマートフォン、通信設備の投資が堅調に推移しそう。北米は政権交代後も中国との貿易量は減少するが、国内の設備投資が増える。北米は医療機器・容器が継続して需要があり、新たにEVが市場投入される動きもあって、設備投資を押し上げる。
 ようやく回復傾向をみせるプラ機械だが、産業機械業界全体でみると「厳しい冬」が続く。日本産業機械工業会がまとめた20年の受注金額は合計4兆6022億円(前年比5%減)で、2年続けて5兆円に届かなかった。内需と外需ともマイナス成長が続く。深刻なのは国内の製造業向けで20年は合計9575億円(同14・2%減)と、ついに1兆円を割り込んだ。

 国内の経済成長には、製造業向け設備投資の回復が欠かせない。また設備投資は、企業の将来的な国際競争力の確保という点も無視できない。新型コロナの感染拡大に歯止めをかけ、早期の投資回復を期待したい。

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