新型コロナウイルスの感染症拡大防止に向け、たゆまぬ努力が続けられているが、終息後を見据えた対応も同時並行的に考えていかなければならない。

 今回、テレワークへの関心が高まったが、すでに昨秋から導入に向けた動きが起きていた。昨年9月に関東地方に上陸した台風で、鉄道の運転見合わせや遅れなど首都圏の交通機関に大きな乱れが生じ、多くの人が通勤困難になった。それをきっかけにテレワークの導入を進めた企業は、今回も速やかに対応できたのではないだろうか。

 三谷産業は昨年7月22日から9月6日までに約9割の社員がテレワークを経験し、台風15号の上陸の際も、多くの社員がテレワークに切り替えて業務に当たった。駅構内への入場規制がかかるほどに混雑した電車に乗らずに済み、時間的・身体的な負担無く仕事を進めることができた。会社としても社員の安全の確保を優先しつつ仕事の遅滞を抑制できるなど、事業継続計画(BCP)としてもテレワークが有効であることを確認できたという。

 新型コロナウイルスだけでなく、今すぐにも大規模な地震に見舞われたり、もはや季節を問わず激甚な被害をもたらす豪雨に襲われる可能性がある。「転ばぬ先の杖」-。やはり事前の準備が肝心だ。

 一方、慶応義塾大学と総合研究開発機構(NIRA)が先ごろ、新型コロナウイルスの感染拡大がテレワークを活用した働き方、生活・意識などに及ぼす影響に関するアンケート調査を実施した。その速報結果でテレワークの障害として「自分の職種や業務に合わない」「外部から会社・事務所のサーバーやシステムへアクセスが許されていない」「情報セキュリティ情報管理に対する不安がある」などが挙がった。こうした課題の解決も今後求められてくる。

 外出を控え、需要が後退するなかで素材から最終製品にいたるサプライチェーンを途切れないようにすることも重要だ。

 2020年4~6月期の実質GDP予測平均は、前期比年率で約11%減に落ち込んだ。外食を控え、休日は遊興施設に行かないなど人為的に生じた需要の後退と言えよう。自動車・電機メーカーも生産を停止し始めている。しかし新型コロナが終息し需要が戻ってきた時、すぐに供給が立ち上がってこないとGDPの約7割を占める消費に悪影響を及ぼしかねない。通年で見ればGDPが微減にとどまるような努力を期待したい。そのためにもサプライチェーンが滞らないよう、政府や自治体の迅速な対応、そして民間の努力が引き続き求められる。

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