今年は国内総合化学の経営トップが相次いで交代する。直近の2021年4~12月期決算は石油化学製品の市況上昇、半導体材料などの旺盛な需要に支えられ、最高益を更新した企業も多い。一方で長引く物流混乱、地政学リスクへの警戒感は拭えない。カーボンニュートラル(CN)という大きな課題にも直面する。次のリーダーはリスクとチャンスに目配りし、柔軟な発想と大胆な行動力で新たな時代を切り開く役割を担う。

 東ソーは3月1日付で桒田守取締役が社長に就いた。桒田氏は工場勤務が長く、技術畑の出身。社長交代会見では自身の役割を「工場勤務経験者としてCNと成長戦略の具体化を実現すること」と語り「とくにCNは日本の製造業の生き残りがかかる。全力で取り組む」と力を込めた。

 4月1日付で社長に就く旭化成の工藤幸四郎取締役。繊維畑を一貫して歩み、グローバル競争の荒波にもまれる中で事業を切り盛りしてきた。経営環境について「世の中がコロナ禍で大きく変わり、また50年のCNに向かうなか、われわれも貢献していく必要がある」と言及。自身の経験に重ねながら「今の旭化成も変革が待ったなし。強いリーダーシップで仕事に当たる」と表明した。

 昭和電工の髙橋秀仁社長は1月4日の就任後初めての経営方針説明会で「サステナビリティ(持続可能性)は経営の根幹。石油化学、化学品事業を持つ化学メーカーとしてCNに真摯に取り組む」と明言。「(昭和電工マテリアルズとの)統合新会社を世界で戦える会社へと変革する」と語った。

 各社トップがCNに対し強い決意を示すのは、越えるべきハードルを自覚していることの裏返しでもある。石化関連事業のCN達成に向けては原料やエネルギーの転換、省エネなどの施策に加え、CCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯蔵)、ケミカルリサイクルなどの新技術も総動員する必要がある。

 4月1日付で三菱ケミカルホールディングスの石化・炭素所管の執行役員エグゼクティブバイスプレジデントに就く池川喜洋代表執行役員は本紙取材で、50年のCNや中間点の30年目標から逆算すると「業界の構造改革や再編は現時点でスタートしないと間に合わない」と警鐘を鳴らす。

 この3年で総合化学を率いるトップの顔ぶれは大きく変わる。世の中に不可欠な石化関連事業のCNを、どのようなかたちで成し遂げるか。一社では解決できない難題への最適解を導き出すうえでも、リーダー同士が胸襟を開いて業界の未来を活発に議論してもらいたい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

社説の最新記事もっと見る