近年、多くの製造業で注目を集めている金属3Dプリンター。金属を3Dデータに基づき造形する技術で、三次元複雑形状など作製が難しかった部品が製造できるほか、軽量化や高機能化といったさまざまな機能を効果的に発現できる。年々精度や造形速度が向上しており、産業、航空宇宙、ヘルスケアなど幅広い分野で適用が拡大している。欧米を中心に導入が進むなか、日本でも純国産の金属3Dプリンター技術体系確立の動きが本格化している。

 第一工業製薬のグループ会社である第一セラモ(滋賀県東近江市)は、島津製作所の子会社である島津産機システムズ(大津市)、エス.ラボ(京都市)、近畿大学との4者共同で「MEX方式(材料押出積層法)の金属3Dプリンターによる金属・セラミックス部品の開発技術の革新」を目指して研究を開始した。金属3Dプリンター業界において海外製の装置や原材料が多く流通しているが、共同研究は国内メーカーと大学が、それぞれの専門性を持ち寄ることで、さまざまな優位性をもつMEX方式の純国産化を目的としている。

 現在、金属3Dプリンターメーカーの多くは、敷き詰めた金属粉末をレーザーで溶かしながら造形する「PBF方式」(粉末床融解結合方式)を採用しているが、樹脂で主流のMEX方式を金属3Dプリンターにも利用する動きがでている。同方式では金属粉末を混ぜた樹脂材料を熱で溶かしながら造形した後に樹脂を除き金属焼結体(造形物)を得る。設備がシンプルで造形が速く、大きな造形物にも対応できることから、試作品だけでなく実部品の製造にも適している。

 4者が実現を目指す金属3Dプリンターの加工工程では第一セラモの3Dプリンター用コンパウンド材料(ペレット状)を使い、エス.ラボの金属3Dプリンター「GEM200DG」で造形する。焼結には、島津産機システムズの小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」を使用するなど、各者の拠点に装置・部材を置いて効率的に研究を進める。共同研究では、材料ごとの最適な処理条件の探求や金属3Dプリンターシステムの改良に取り組み、専門知識がなくても容易に金属3D造形品を生産できるノウハウを確立していく。さらに有機溶剤を用いない方法の実現を目指しており、環境負荷低減にも貢献していく考えだ。

 第4次産業革命において、その一端を担う可能性がある金属3Dプリンター。まだ改善の余地が多く、発展途上の技術だが、純国産化により各製造業の高度化および発展につながることを期待する。

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