タイヤ業界が自動車タイヤのサステナブル化に向けて動き出した。2050年カーボンニュートラルに向けて原材料の転換を進めるもので、柱となるのが高分子材料のバイオマス化とリサイクル。前者は化学メーカーを主とするサプライサイドに拠るところが大きいが、リサイクルについは処理業者を含む関連産業全体の取り組みが前提となる。年間100万トン近くが使用済みタイヤとして排出される状況の下、その原材料化は循環型社会実現に不可欠。リサイクル技術の開発実用化とともに、社会システム構築に向けた検討が求められる。

 20年の日本国内における使用済みタイヤの発生量は93万7000トン(8600万本)で前年比8万9000トン(1000万本)減少した。このうちタイヤ取り替え時の発生量は、新型コロナウイルスによる経済の落ち込みなどで市販用タイヤの販売が減少したことを受けて80万6000トン(7300万本)と、前年より約1割減ったほか、廃車時の発生量も台数が減って13万1000トン(1300万本)と、タイヤ取り替え時同様に約1割減となっている。

 一方、20年のリサイクル利用量は、化学工場における使用量が前年比3万トン増加したものの、全体では前年より5万4000トン減少して91万2000トンとなったが、廃タイヤ発生量の減少でリサイクル率は97%と3ポイント上昇した。全体の65%が熱利用(サーマルリサイクル)されており、使用量では製紙工場が最も多く44%。次いで化学工場の10%となっている。一方、原形加工利用(マテリアルリサイクル)は17%にとどまり、うち5%が更生タイヤ台用(リトレッド)で再生ゴム・ゴム粉は12%だった。

 また全体の15%が中古タイヤや原燃料用チップ/カットタイヤとして輸出されているほか、熱利用向けに使用済みタイヤの切断品/破砕品が約9万9500トン(前年比3500トン増)が有価購入するかたちで輸入されている。

 自動車タイヤのサステナブル化に向けて、リサイクルでは熱利用を主体する現状から原形加工利用へと大きくシフトする必要がある。そのため技術的には再生ゴム・ゴム粉のほか、スチールやカーボンブラックといった無機・金属素材などマテリアルリサイクルの拡大と、ケミカルリサイクルによる高度利用技術の開発が求められる。

 同時に、消費者や事業者から排出される使用済みタイヤを効率よく、かつ確実に回収するシステムの構築が必須。いずれも他国に先駆けて実現することで、タイヤ産業のみならず、わが国の産業競争力向上につながるだろう。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

社説の最新記事もっと見る