関西に本拠を置く製薬会社や化学メーカーなどが、市場規模の拡大が所期される医薬品モダリティ(治療手段)にかかわる事業に積極的に経営資源を投じている。近年、同地域で中分子医薬品に分類される核酸およびペプチド、高分子医薬品の抗体、さらには再生医療、細胞治療などに関連する施設が次々と立ち上がるなど活発化している。

 2019年1月、日本触媒(大阪市)が吹田地区研究所(大阪府吹田市)内に核酸やペプチドの原薬を受託製造する施設を完工させた。その後、製造設備を追加するなど体制を整えて21年3月、初めて中分子原薬のGMP製造品を出荷した。この実績を基に営業活動を本格化しており、中分子原薬受託製造を大型事業に育て上げる。

 ペプチドでは19年7月に、ペプチド原薬のCDMO(研究開発・製造受託)であるペプチスター(大阪府摂津市)の本社工場が竣工した。ペプチド創薬を手掛けるペプチドリームなどとともにペプチスターを設立した塩野義製薬の摂津工場内に所在している。ペプチド原薬は合成、精製、濃縮、乾燥といった工程を経て作られるが、各工程で優れた技術・製品を保有する化学企業などがペプチスターに出資している。英知を結集し、世界トップのペプチド原薬CDMOを目指す。

 ペプチスターに出資するワイエムシィ(京都市)は、核酸やペプチド医薬品などの有効成分を効率よく分離精製できる連続クロマトグラフィーシステムの普及に力を注いでいる。同システムの世界トップメーカーを目指し、19年秋に完工した京都事業所(京都府福知山市)の2期工事の着手を決めた。パイロット規模の技術開発と、医薬品の開発および商用生産で同システムが有用であることを実証するため、受託製造を行える建屋を新設する。投資額は約50億円で25年の本格稼働を予定。同システムの世界的な拠点へと進化させる。

 S-RACMO(吹田市)が今月、親会社の一社である大日本住友製薬の総合研究所(同)に設けた再生・細胞医薬製造施設を稼働させた。商用生産を想定した製造方法を開発し、iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の組織・臓器など高品質な再生・細胞医薬品の製造を受託する。

 関西は京都大学iPS細胞研究所(CiRA)をはじめ京大や大阪大学、神戸大学といったアカデミア、理化学研究所の拠点、次世代バイオ医薬品製造技術研究組合なども集積している。さらなる連携を図り、製薬業界において関西が世界最先端を走る地域へと発展していくことを期待したい。

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