自動車業界における電気自動車(EV)シフトが、産業機械メーカーに戦略転換を迫っている。三菱重工業は5日、世界最大級のモーターメーカー、日本電産に工作機械事業を売却すると発表。これを機に日本電産はEVトラクションモーターシステムを重点育成する。また日系射出成形機メーカーは、EV用の電装プラスチック部品の需要急増を見込み、得意の電気式射出成形機を世界で拡販する。
 菅首相は「2050年までに温室効果ガスの排出ゼロ実現」を掲げ、30年代半ばまでに「新車をハイブリッド車(HV)、EV、燃料電池車(FCV)にする」とした。一方、英国、ドイツ、フランス、中国、米国などはEVを強く推し、脱ガソリンへ舵を切りつつある。
 こうした動きのなか三菱重工は、100%子会社の三菱重工工作機械(MAT)を今年5月に日本電産へ売却する。80年の歴史を有し、NCホブ盤、量産部品用トランスファーマシン、門形加工機など日本のモノづくり産業を支えてきた。今後、脱ガソリン車が増えることで、従来のエンジン部品の需要が減少する可能性がある。
 その一方、EV化は新しい自動車部品の需要創出が期待できる。日本電産は、電動化にともないギヤ部品の高精度化に加えモーター、インバーター、減速機で構成される駆動システムの性能向上が要求されるとみた。従来の部品加工技術に限定せずモジュール化、システム化が重要となり、高度なノウハウを活用する取り組みが必要だ。
 日本電産は、車載事業を重点分野としてEV用トラクションモーターシステムに力を注いでおり、高精度な工作機械の技術を取り込むことによって相乗効果を見込む。
 EV化の動きは、射出成形機メーカーの事業拡大にもつながる。日系メーカーは電気式で豊富な知見を有するが、欧米勢など海外勢は油圧式が主流を占める。ただ車載用のモーター部品には高精度なプラ部品が不可欠であり、欧米の大手自動車メーカーは日本の電気式に強い関心を抱いている。
 日精樹脂工業は、すでに東欧のスロバキアに現地法人を設け欧州市場を狙っている。芝浦機械はイタリアに現地法人を置いて、グループ製品の販売・サービス体制を強化している。
 射出成形機メーカーにとって20年は、新型コロナウイルスの影響で欧州などの海外事業は事実上ストップした。新型コロナの収束はまだ先になろうが、EV化の動きは、もはや止まらない。独自の差別化技術で、旺盛な自動車向け新規事業を取り込んでほしい。

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