経産省、補正予算案30億円 SC強靱化へ技術開発

 経済産業省は、サプライチェーン(SC)強靱化に向けた技術開発を加速する。7日に閣議決定した2020年度補正予算案に30億円を計上、複数のプロジェクトを進める。一つは中国など特定国に供給を依存する部素材の代替・使用量低減技術の開発。もう一つはSCの柔軟な組み替えを可能にするデータ活用技術。NEDOを通じた委託事業および補助事業として早期開始を目指す。
 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、さまざまな分野でグローバルSCの寸断リスクが顕在化している。このため同省は、補正予算案に2486億円を盛り込み、生産拠点を特定国から国内に回帰を促すほか、ASEAN諸国などへの多元化を促進するSC改革を進める。
 それと同時に、特定国からの輸入依存度の高い部素材の代替・使用量低減技術の開発を強化する。主な対象はレアアースで12億円を計上した。供給源が限定されている重希土類については、使用量を減らしても同程度の性能を発揮する磁石、重希土類を使用しない磁石などの開発を進める。軽希土類のように供給ソースはあっても低品位で使えないレアアースについては、品位向上技術、低品位のままでも使用できる技術の開発を急ぐ。
 一方、SCの迅速・柔軟な組み換え技術は衛星データの活用を含めたSC間でのデータ連携を軸に技術を開発、実証する。
 SC上において多数の取り引き先を有するメーカー、サプライヤー、生産機械やデジタルツールのベンダーにより、シームレスなデータ連携を可能にするデジタル技術開発を促進。SCの一部が途絶しても、代替生産や中間製品・部品の再設計を迅速に実施することでSCを維持するシステムを確立するもの。
 これと合わせ、光学、レーダー、赤外線など衛星データを適切に組み合わせ、工場の稼働状況などを解析する技術の開発も進める。

厚労関係1.6兆円

 政府がまとめた2020年度補正予算案のうち、厚生労働省関係は1兆6371億円を計上した。その多くを新型コロナウイルスの感染拡大防止策と医療提供体制の整備に充当し、治療薬の開発や人工呼吸器の確保にも振り向ける。中国やイタリアに依存している医薬品原薬の国産化の支援にも取り組む。
 感染拡大防止策としてマスク、消毒用エタノールなどの物資の確保に1838億円、治療薬・ワクチンの開発促進に275億円、PCR検査体制の確保に49億円をそれぞれ計上。医薬品原薬の生産設備の費用補助には30億円を用意した。

農水省 販促支援に重点

 新型コロナウイルス感染症にともなう農林水産省の2020年度補正予算案は、総額5448億円となった。
 需要が減退している農林水産物の販売促進対策として1400億円を牛肉、果物、水産物、花きの支援。サプライチェーンの見直しとして野菜などの輸入品から国産農産物への切り替えのための体制整備に143億円。
 また需要減退の影響の大きい畜産・酪農の事業継続に450億円を用意。肉用牛の計画出荷支援や、新型コロナウイルス感染症の発生した農場への代替要員の派遣支援を行う。給食の休止などにともない在庫が増加している脱脂粉乳の飼料への仕向け先変更も支援。さらに、農林漁業者・食品産業事業者の事業継続対策に60億円。次期作期を迎える野菜・花き・茶には種苗、土壌改良など資材購入支援に242億円。外国人材不足に対し農業経験のある即戦力の人材、農業高校・農業大学校の学生の派遣・雇用の支援対策費を確保する。

文科省  教育ICT加速

 新型コロナウイルス感染症対策で文部科学省が計上する今年度補正予算案は、総額2763億円となった。
 大半の2292億円を義務教育段階での情報通信技術(ICT)を活用した教育環境を整備する「GIGA(ギガ)スクール構想」の加速に充てた。感染症研究・大学病院への支援として、診断法、治療薬、ワクチンなどの研究開発の加速に64億円、大学病院への患者受け入れ体制の整備に25億円、帰国する日本人留学生を受け入れる国立青少年教育施設の整備に12億円を計上した。
 また、新型コロナウイルス感染症対策として当初予算と補正予算で講じる施策を「緊急経済対策パッケージ」として取りまとめた。

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