米国のプラスチック容器包装をめぐり先月下旬、100を超える企業・団体が極めて野心的な目標を掲げた。同容器包装の再利用に取り組むイニシアティブ「米国プラスチックパクト」に署名する世界的ブランドオーナーも含まれる。リサイクルできないストローやポリスチレン、塩化ビニル樹脂など11品目を「問題があり不要な素材」として2025年までに使用を取りやめるという。米国化学工業協会(ACC)は「食品廃棄物を増やし、プラスチックよりも多くの二酸化炭素を排出する素材の使用を促すことになる」と懸念を表明した。

 現在、米国のリサイクル率は35%前後で推移しており、なかでも容器包装で遅れが目立つ。その理由をACCは、プラスチック容器包装の複雑さとリサイクルシステムの分断にあると分析している。

 米国のリサイクルインフラの大部分は数十年前に構築された。その後、ラップやスナック菓子の袋、再封可能パウチなど、新しいタイプのパッケージが導入され、旧来のシステムでは対応できなくなっているという。

 米国プラスチックパクトもACC同様、リサイクルの推進に向け、プラスチック容器包装が抱える問題の解決の道を探ってきたが、11品目については25年までに循環型に移行できる見通しが立たないため廃止に舵を切った。米国のプラスチックリサイクル業者協会(APR)は、こうした米国プラスチックパクトの姿勢を支持している。

 「問題があり不要な素材」とした11品目には、食品廃棄物やエネルギー使用量の削減など環境上の利点があった。代替手法の実装を待たず使用を禁じるのは、結果として損失を大きくする恐れがあるというのがACCの懸念だ。

 国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)では、社会、経済、環境にまたがる多様の課題の同時解決を目指している。一つの課題だけを取り出して解決しても、それが別の課題を深刻化したり、新たな課題を生むのであれば有効な解決策といえないからだ。

 欧州化学工業連盟は、欧州委員会が進める新たな化学物質規制「EU化学品戦略」について、40年時点の欧州化学品市場の規模は同じでも、新規制を一気に導入した場合、その間の製品ポートフォリオ変更による販売額の減少は年平均670億ユーロとなるが、代替手法を待って段階的に進めれば470億ユーロに抑えられるとの試算を公表している。

 米国プラスチックパクトによる11品目を廃止する決断は果たして副作用まで考慮した結果なのか。今後示すとしている代替に向けたガイダンスに注目したい。

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