メーカー機能を持つ中堅のエレクトロニクス商社が相次ぎサステナビリティ戦略を打ち出している。多くが戦略推進組織を立ち上げ、グループを挙げて環境課題の解決や多様性を重視した人材の育成・活用などに取り組む方針を表明している。取り扱う多様なな電子部品は、EV(電気自動車)の普及や5G(第五世代通信)基地局の設置増などを背景に需要伸長が続く見通しだ。国内外での販売・生産を担う、これら商社にとってサステナビリティ戦略は、グローバル展開強化のうえで、より重要性を増すだろう。

 各社の動きをみると、加賀電子グループはサステナビリティ推進体制として社長が委員長となるSDGs委員会を設置。直下に環境、社会、ガバナンスのワーキンググループを配し、グループ横断的に進めるマネジメント体制を敷いた。2021年4月以降、委員会・ワーキンググループで論議を重ね、同年末にサステナビリティ中長期経営計画を策定した。マテリアリティ(重要課題)4つを特定し、中長期目標として再生可能エネルギー100%化の実現や社有車両のEV化、ダイバーシティと人材マネジメントなどを掲げている。

 またダイトロンは、11年に策定したCSR基本方針の追求継続に加え、この2月にマテリアリティを特定した。サステナビリティ体系の基礎としてコーポレートガバナンス基本方針を策定している。マテリアリティとして「パートナー価値創造」「社会・環境価値創造」「経営基盤確立」「経済価値創造」「人材価値創造」を設定。これらを追求し、多くのSDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献していく。パートナー価値創造では、メーカー機能を持つ技術商社として多様な価値を生み出す。具体的にはメーカー機能および商社機能の強化を進め、新たな市場・顧客の開拓、さまざまな産業界のICT化・自動化を通じ生産性・効率性向上に貢献する。

 佐鳥電機は、21年12月にサステナビリティ推進委員会を設置、30年度にエネルギー、モビリティなど5つの重点分野のSDGs対象商材の売上比率で、20%の達成を目標とした。5分野のうち水衛生は安全な水・衛生ビジネスの拡大を、エネルギーは電池や太陽光、蓄電池などグリーンエナジービジネスの拡大を、モビリティでは同市場向け省エネ化およびEV化などエコロジー商材の拡大を進める。

 30年をサステナビリティ戦略の目標達成時期と設定する企業が多い。このため今後10年間の活動が各グループの将来の方向性を左右することが予想される。今後の動向が注目される。

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