NTTが、今までの常識を覆す新たな働き方を打ち出して注目されている。6月24日に発表した「リモートワークを基本とする新たな働き方の導入について」において、働き方の新ルール「リモートワークスタンダード」を追加した。勤務場所は、現在のような会社の事業所ではなく「自宅」となり、毎回テレワークを申し出る必要もなくなる。出社の考え方も変わる。定期券代を受け取って通勤するのではなく、会社に出張して、後で旅費として申請・精算することになる。これまで社員の居住地は勤務する事業所の近く(通勤圏)である必要があったが、新ルールでは全国どこにでも住むことができる。旅費の上限もないため飛行機を使って出社することも可能という。

 従来の「会社」「自宅」の概念を変える思い切った制度の見直しだ。これまでもNTTグループは、リモートワーク制度・手当やスーパーフレックスタイム、分断勤務、サテライトオフィスの拡充などを通じて、「働く時間」や「働く場所」の自由度を高めてきた。しかし生活の中に仕事を取り入れた「ワーク・イン・ライフ」を、さらに推進するには「住む場所」の自由度を高めることが重要だと考えて、新ルールの追加に踏み切った。当初は主要グループ会社本体社員全体の5割程度が対象になると想定、7月1日から実行に移した。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自宅で働く在宅勤務や、移動中やその間に働くモバイルワーク、サテライトオフィスなどの施設を利用した勤務、リゾートなどで行うワーケーションなどテレワークの導入が進み、人々の働き方が大きく変わってきた。通勤時間が短縮、削減されるメリットは大きく、その分家族と過ごしたり、健康を維持するための運動や趣味を楽しんだりする時間が確保され、より充実した生活を手に入れることができたと感じている人も多いだろう。

 週休3日制などの導入も徐々に始まっているが、先進的な働き方の実現を目指した取り組みや試みは、IT企業やスタートアップなどが率先し、かつ積極的な動きを見せることが多かった。そのなかでNTTのような大企業が、こうした大胆な取り組みを始めることは例がなく、社会全体に与えるインパクトは非常に大きい。

 NTTグループと同じようなやり方は難しいかもしれないが、大企業、中堅・中小企業を問わず、先進的で大胆な発想に基づき、働き方の根本的部分から見直し、社員の生活向上や企業の発展につながる取り組みが続々と出てくることを期待したい。

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