海洋プラスチックなどによる環境汚染が世界的課題となるなか、日本政府はプラスチック資源循環戦略を策定。2030年までにプラスチックの再生利用を倍増することや、バイオマスプラスチックを約200万トン導入する目標を掲げた。

 その達成に有力な手段とされるのが、マスバランス(物質収支)方式を適用したバイオマスプラスチックや廃プラスチック由来再生材の導入だろう。とくに大量使用されるポリオレフィンにおいて、マスバランス方式を適用した再生可能プラの普及が期待されている。

 その一つに、オーストリアのボレアリスや蘭ライオンデルバセルが商業生産しているバイオマスポリプロピレン(バイオマスPP)がある。これらはフィンランドのバイオ燃料大手、ネステが廃食用油などから製造したバイオプロパンを原料の一部として使用している。具体的には、既存の石化プラントに石化由来プロパンとバイオプロパンを混合して製造している。

 このバイオプロパンを部分的に用いたPPを「100%再生可能PP=バイオマスPP」として使用するためにマスバランス方式が適用される。例えばPPの原料であるプロパン100トンのうちの10%、10トンをバイオプロパン、残りを石化由来プロパンを用いるとする。マスバランス方式を適用すると、生産された全PPのうちバイオプロパン10トン分相当を「100%再生可能PP=バイオマスPP」と見なすことができる。マスバランスの概念そのものは、すでに紙(FSC認証など)、パーム油、電力など多様な業界で使われているものだ。

 マスバランス方式を適用したバイオマスプラ、廃プラ由来再生材には(1)主に非可食原料を用いており、食品と競合しない(2)既存の石化プラントを、そのまま使用できる(3)第三者認証によってトレーサビリティーが確保されている-というメリットがある。とくに原料から包装材加工までのバリューチェーンで第三者認証機関から厳しい監査を受けるため、実商品の現物検査を必要としないかたちで「100%再生可能プラ製品」であることを担保できる点は大きい。

 環境意識の高まりから現在、国内でもサトウキビ由来のバイオマスPEが急速に普及している。ただサトウキビ由来PEの生産量は限られ、世界需要に供給が追いついていない状況だ。政府が掲げた目標に近づくためには、これら既存のバイオマスプラとともに、マスバランス方式を適用したバイオマスプラ、廃プラ由来再生材の導入を推進していく必要があるのではないだろうか。

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