原材料価格の上昇がプラスチック加工業界の経営を圧迫している。全日本プラスチック製品工業連合会の2021年10~12月期の会員景況感調査報告によると「売り上げ不振」と答えた企業は全体の4割と高い割合を示した。「原材料高」を訴えた企業は72・7%と前期(7~9月期)より5・2ポイントも増えた。製品別にみると、自動車向けで「生産高・売上高が前年同期に比べ減少した」と回答した会員が48・8%となり、昨今の状況を反映しているようだ。

 主な原因は半導体不足や部品不足の影響と考えられる。また原油高による原料価格の上昇、物流の停滞により原材料そのものが入手できないことに加え、物流費の高騰も影を落としている。

 会員からは「原油高による原材料単価の上昇、電気料金の高騰、流通経費増大という中で、なかなか製品値上げに踏み切れない状態が続いている」「半導体不足で生産停止品が多い」「部品を手に入れることが困難」「自動車の半導体、ハーネスの不足により生産調整が続いており、原油や材料の価格上昇も含め、しばらくは好転する可能性は低いだろう。オミクロン株でさらにこの状態が続くと好転のタイミングが遅れてしまう。新型コロナが早く落ちついてくれることを期待する」といった声が挙がっている。

 巣ごもり需要に合致した日用品やパソコン関連の部材など一部の製品は好調だが、全体としては厳しい状況が続いているといえよう。とくに自動車関連では2次・3次の下請け企業は、より厳しい経営環境にさらされている。

 経済産業省が1月31日に発表した21年12月の鉱工業生産指数(速報値)は、前月に比べ1・0%低い96・5と、3カ月ぶりに低下した。1月以降、オミクロン株の拡大が、さらに生産を下ぶれさせる可能性があり、気が抜けない。

 今後の見通しは非常に難しい。半導体不足の影響は一時期より小さくなりそうだが、長期化の様相を呈している。物流の停滞についてはグローバルなサプライチェーンの問題となっている。物流業者から「貿易量の多い米中間の輸送にコンテナ船を持っていかれて日本には回ってこない」という話を聞くことも最近多い。日本から米国への輸出は自動車関連が多いだけに、半導体不足はさまざまな場面に影響を広げている。

 経済産業省は、鉱工業生産指数で「持ち直しの動きがみられる」という基調判断を据え置いたが、消費が盛り上がってきた実感はない。他方、企業物価指数は記録的高水準となっている。官民が一体となり、難局を乗り切る策を講じるべきではないか。

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