欧州に比べ、日本の消費者はサステナビリティに対する意識が低いと言われる。欧州を今夏、熱波が襲った。エアコンの普及していない地域で40度Cを超える気温は危険極まりない。大規模な山火事も発生している。これら異常気象が「気候変動に由来する」というリアルな感覚が個人にあって危機意識が高まり、環境に優しい製品を手に取ろうとする消費行動につながっているのであろうか。

 世界的な日用品・化粧品原料サプライヤーの日本支社の担当者の話-。来日したドイツ人の同僚が日本の店舗における商品の過剰包装に驚いていたそうだ。「サステナブルでない」ということか。日本でも集中豪雨などの異常気象は頻繁に起こっている。自然を愛でる豊かな文化・感性があるというのに、彼我の感覚には隔たりがある。

 もはや感性だけで片付けられる問題ではない。海洋プラスチックごみ問題が取り沙汰され、スーパーなどでレジ袋が有料化されて以来、エコバッグに購入した商品を詰める消費者の姿は目新しいものでなくなった。ストローの使用を消費者の判断に委ねる喫茶店も増えてきている。新型コロナウイルスの感染対策の一環として個包装が増えるなど揺り戻しも一部見られるが、少しずつ意識が変化し始めてきたと言える。

 こういった周囲の環境整備が、環境への悪影響を減らす消費行動には重要になる。小売店が動かなかったら、エコバッグは今ほど普及しなかったかもしれない。欧州では、個別製品の環境に与える影響を消費者が判別できるエコラベルなどのプラットフォームが先行していることも、環境意識の醸成に大きな役割を果たしていると思われる。

 環境に配慮すると多くの場合、製品の値段は高くなる。それを納得して受け入れる消費者心理を醸成できるかがカギとなる。消費者の意識が変わらなければ、環境負荷が高かろうが安い製品に手が伸びる。引き止めるのは難しい。これを打開するには教育も重要な要素だろう。日本でも持続可能性について授業で教える機会が増え、とくに若年層は環境意識、エシカル消費への関心が高まっているとされる。ただし未来を担う若者が消費の主体を占めるようになるには時間がかかる。

 だからこそインフラ的なアプローチは年長世代の行動変革を促すのに有効となる。個別企業の評価において、ESGやSDGsなどの枠組みが増え、ステークホルダーの要請も強い。この流れを、さらに推し進めるため、消費者の意識改革につながる実効性ある施策を、より真剣に議論するべきではないか。

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